【なでしこサッカー新時代】第3回 岩清水梓 (前編)|「女子選手はプロになれないんじゃないかと思っていた」

2021年06月30日 西森彰

WEリーグ創設に「ウソでしょ?」と反応した理由とは?

岩清水選手は、クラブ生え抜きのベテランとしてベレーザの5連覇に貢献。(C)SOCCER DIGEST

 2021年、日本の女子サッカーは新たな時代に突入する。

 2020東京オリンピックは約2か月後に迫り、この秋には女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』が誕生する。なでしこたちは来るべき時に備えて、コロナ禍という難しい状況のなか、ひたすら前を向き、準備を進めている。

 節目を迎えるこの時だからこそ、これからWEリーガーとなる選手たちの声に耳を傾けてみたい。彼女たちが語る、なでしこサッカーの未来とはいかなるものか。

 第3回は、結婚・出産を経てプレーヤーとしてピッチへ戻ってきた岩清水梓選手が登場。2011年女子ワールドカップで優勝した際のなでしこジャパンの一員であり、クラブ下部組織からの生え抜きとして、日テレ・東京ヴェルディベレーザのなでしこリーグ5連覇に貢献している現役選手だ。

 前編では、岩清水選手のWEリーグへの期待と、成功への課題を中心に語ってもらった。
 
――2019年に結婚、出産を発表され、ここ数年で生活環境が激変されたかと思います。どのような変化がありましたか?

 生活は、子供を最優先することになり、自分ひとりでサッカーと向き合っていた頃と比べると、信じられないほど変わりました。今は、息子を保育園に預けて練習に参加するのですが、限られた時間で、どれだけ集中して競技に取り組むことができるかを意識しています。ピッチの中では、自分が母親ということも一瞬、忘れるくらい集中している瞬間もあって、自分でも非常に驚いていますし、とても充実していると思います。

――充実していると、岩清水選手の表情からも伝わってくる気がします。この秋から、いよいよ女子のプロサッカーリーグ、WEリーグが始まりますね。そのWEリーグですが、設立の話を聞いた時の第一印象をお聞かせください。

 第一印象は「ウソでしょ!」と思いました。それには理由があって、これまでにも、何回か「女子プロリーグを始める」という話は上がっていました。けれど、実現していなかったので……。私自身、女子のプロリーグができるにはいろいろとハードルが高いだろうと考えていたので、それらをどうクリアするんだろうなと思っていたんです。

――岩清水選手が考えていた、「女子プロリーグ成立へのハードル」というのは?

 女子の選手たちは、仕事とサッカーを両立している選手が多いので、仕事場での立場がどうなるんだろうと疑問でした。それに、男子のサッカーは集客力もあり、それを選手の給与にも割り当てられるかと思いますが、女子サッカーの集客力では、入場料収入だけで十分な収益が上がらないのに、どう給与を払っていくのか、などですね。あとは、これは今も同じ状況なんですが、練習時間が(夜から)昼になることで、学生をどうするのかと。こういったハードルがあり、女子選手はプロにはなれないのかなと考えていました。
 

次ページWEリーグ開幕に、Jリーグ開幕時のような盛り上がりを…

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事