“リアル”南葛SCが挑む「サッカーと仕事」第3回——布施周士が証言するポジティブな相乗効果

2021年06月30日 伊藤 亮

ブランド品の鑑定をしながらサッカーを続ける日々

南葛SCの布施はボランチとして活躍。バリュエンスホールディングスの社員としても勤務に励んでいる。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

 南葛SCの岩本義弘GMは「サッカー選手としての能力が高いということは、社会人として仕事をする上の能力も高い」と言う。

 パートナー企業・バリュエンスホールディングス株式会社の嵜本晋輔社長は「本人たちは気付いていないだけで間違いなく成長できるポテンシャルがある」と言う。

 これらの言葉を実践しようとしているのが南葛SCの布施周士だ。新たな試みを推進するクラブと企業で働いた結果、新たに見えてきたものやもたらされた影響は、たしかにあった。

 当事者だからこそ語れる「サッカーと仕事」の難しさと楽しさ。待っていたのはつい忘れてしまいがちな「原点回帰」だった。

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 南葛SCを通して紹介してもらい、昨年の9月に現在はパートナー企業となったバリュエンスホールディングス株式会社に就職したのがボランチでレギュラーを張る布施周士だ。

 2020年に南葛SCへ移籍する前はJFLの奈良クラブに所属。縁も所縁もなかった東京・葛飾でプレーヤーを続けるにあたって、働き口を探す必要があった。

「最初は建設会社で働きだしたのですが、現場が遠かったこともあり朝4時半起床で5時には家を出ていました。そして仕事後チームの練習に出て帰宅するのが21時や22時。そして翌朝また4時半に起床の繰り返し。早起きは得意ですし、充実感や達成感も感じられたのですが、徐々にサッカーへ力を注げなくなって。それで辞めさせていただきました」

 現在は、ブランド品や骨董・美術品のリユース事業を展開するバリュエンスホールディングス株式会社のなかで、ブランド買取を行なう「なんぼや」の北千住マルイ店でコンシェルジュ(鑑定士)を務める。

「北千住の店舗が10時に開店するので9時半には出勤。自宅からは電車で10分ほどの距離です。4時半起床だった頃と朝の感覚が全然違うので本当に助かっています。そして17時ぴったりに仕事を上がって練習に向かわせてもらっています。周囲の先輩方にもご理解をいただき、少し仕事が残っても代わりにやっていただけたり、何を聞いても一から教えてくださいますし、その上週末のサッカーの試合に向けて応援の言葉をいただいたり。本当にありがたいです」

 コンシェルジュには、持ち込まれた商品を鑑定する眼力が求められる。これまでの生活と無縁だったブランド名は、最初読み方すら分からなかった。それでも先輩たちから懇切丁寧に教えてもらい、徐々に知識と経験を増やしている最中だという。
 

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