“リアル”南葛SCが挑む「サッカーと仕事」第2回——元Jリーガー社長が提案する新たな価値観

2021年06月29日 伊藤 亮

アスリートの新たな働き方を提案する「デュアルキャリア採用」

元ガンバ大阪の嵜本晋輔氏が社長を務めるバリュエンスホールディングス社は、今年3月に南葛SCとパートナーシップを締結。背番号上にロゴを掲出するユニホームスポンサーともなっている。(C)Valuence Holdings Inc.

「葛飾区からJリーグに」を合言葉に日々奮闘する南葛SC。選手たちにフルパフォーマンスを発揮してもらうために、クラブは就業支援にも力を入れる。

 一方、選手たちを雇う立場である企業側は、いかなるサポートをしているのか。アスリートの働き方という点で、こちらも新たな挑戦に踏み切った企業が、じつは南葛SCとパートナーシップを締結している。

 2020年9月より「デュアルキャリア採用」を始めたバリュエンスホールディングス株式会社。自身もJリーガーとしてキャリアの分岐点で葛藤した過去を持つ嵜本晋輔社長に、社会人プレーヤーの理想を実現する方法を伺った。

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 2021年シーズン、関東サッカーリーグ2部の開幕戦から南葛SCが着用している新ユニホームの背番号上に、新たなパートナー企業のロゴが入った。ブランド品や骨董・美術品のリユース事業を展開するバリュエンスホールディングス株式会社である。嵜本晋輔社長はかつて3年間ガンバ大阪でプレーした元Jリーガー社長として有名だ。そんな特別な経歴を持つ嵜本社長に、南葛SCとパートナー契約を結んだ理由を聞いた。

「関東リーグ2部所属でありながら、『キャプテン翼』の作者である高橋陽一先生がオーナーであるということ、そして以前からの知り合いである岩本義弘GMのサッカーへの情熱と経営手腕の優秀さ。このお二人がタッグを組むことで今後の成長のことを考えると、とてつもないポテンシャルを秘めているのではないかと。現在もクラブ価値は上がっていると思いますが、今後もより高めていただけそうだという期待もあり契約させていただきました」

 じつは南葛SCとバリュエンスホールディングス株式会社は、今年の3月にパートナー契約を結ぶ前から縁がある。同社は昨年9月から、アスリートの競技生活をサポートしながら社会人経験を積むことで引退後のキャリア形成に備える「デュアルキャリア採用」をスタート。その第1号が南葛SCの選手、布施周士なのだ。

「デュアルキャリア採用のきっかけは昨年の新型コロナウイルス感染拡大でした。どのプロスポーツも入場観客数が制限され、スポンサー企業も苦しむ中、クラブチームは難しい経営を迫られました。クラブ運営側からすると、再編にあたりまず手を付けるのが人件費。となると、サッカーをはじめスポーツに夢中になっているアスリートたちの多くが自分の夢を手放さなければならなくなるかもしれない。そこで何かできないかと。私たちは日本国内でリアル店舗の拡大を推進したい思いがあり、そこでアスリートも支援できて、かつ優秀な人材を確保できるのであれば面白い取り組みになる、と考えたのです」
 

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