駒澤大躍進の陰に元鹿島の深井正樹コーチあり! 伝統のロビング戦法の中に洗練された新たな戦術も

2021年06月25日 小室功

2019年から母校のコーチとして指導にあたる

2019年から母校の駒澤大で指導にあたる深井コーチ。駒大の躍進を支える存在だ。写真:小室功(オフィス・プリマベーラ)

 蹴って、競って、拾って、ひたむきにゴールを目指す――。

 一気呵成のロビング戦法といえば、駒澤大スタイルの代名詞だが、そこに今、新たな風味が加わっている。後方から前線に向かってシンプルにボールを蹴り込むだけではなく、「蹴って」の前段階にさまざまな工夫が見られるようになった。

 ロビングを入れるうえで、よりよい場所を探り、その位置によって生まれるゴールへの角度の違いを選手たちが共有し、こぼれ球の狙いを絞っていく。五分五分になりがちなロビングを少しでも自分たちの優位になるような状況を作り出そうとしている様子が窺えるのだ。もちろん、これまでもロビングの入れ方に創意工夫を凝らしていたが、さらにきめ細かくなり、バリエーションも増えた。
 
 戦術的プランナーの主導者は同大学OBであり、2019年からコーチに就任した深井正樹だ。03年から鹿島でプロのキャリアをスタートさせ、新潟、千葉、長崎などでもプレーし、16年シーズンをもって引退。千葉の普及コーチを2年にわたり務めたあと、母校・駒澤大にコーチとして戻ってきた。と同時に、総合教育研究部スポーツ・健康科学部門の講師の肩書も併せ持つ。

 長きにわたって、縦に素早いサッカーを標榜し、追求してやまない秋田浩一監督は「タッチ数を少なくしながらゴール前にボールを運ぶとか、フリーの選手を見つけて、そこをうまく使うとか、そういう意識がより強くなっている」と、チーム内の変化を大歓迎。あの手この手を駆使し、選手たちの視野を広げようとする深井コーチの指導力に全幅の信頼を寄せている。

「日々のトレーニングの積み重ねが試合に反映されるものなので、結果は重要だけど、そこにいくまでの取り組みがすごく大事」と語る深井コーチは「内容が良い時と良くない時の差が大きい。自分からの選手へのアプローチの仕方だったり、落とし込みの部分がまだまだ足りないかなと感じている」と、課題に目を向けた。ただ、それは成長の余地を残しているという手応えの証でもあるだろう。
 

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