「もっと楽しむことを考えてもいいんじゃないか」浦和・小泉佳穂に届いた柏木陽介からのメッセージ

2021年06月19日 佐藤亮太

「そもそもレッズの関係者もサポーターの方も陽介さんの控えとも、戦力としても考えていなかったと思う」

序盤戦から起用が続いた小泉だったが、なかなか結果を得られず苦しんだ。そんな時に柏木から送られた言葉とは…。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「勝たせる能力がJ1レベルではない」
「個人としてですか? ん~あらゆる面で足りない」
「足りないところばかり。まだまだ」

 今月16日に開かれたオンライン会見で浦和レッズMF小泉佳穂は愛好する将棋の長考のように腕を組み、首を傾げ、言葉を選び、刻むように語った。

 小泉は今季ブレイクした選手のひとり。J2FC琉球から完全移籍し、難解なロドリゲス戦術のもと、ボランチ・トップ下でリーグここまで17試合全試合に出場。うち16試合に先発(6月18日現在)と、主力となった。

 司令塔としての存在感、期待感、今後の伸びしろは誰もが認めるところ。対戦チームが要注意選手に挙げるほどになった。

 急成長する小泉にリカルド・ロドリゲス監督は「彼は"サッカーを生きる"と言える選手。向上心もあり、常に全力を出している」と評価している。

 にもかかわらず、理想の高さの裏返しか、小泉は自身のプレーにまったく納得いっていない。

 いま思えば、小泉の抜擢は当初のプランから外れていたともいえる。シーズン前の見立てでは柏木陽介を起用したのち、戦術にフィットする時期を見計らい小泉を起用すると考えられた。しかし柏木がキャンプ中の規律違反のため、全体練習の参加を許されず、結果、3月にJ3FC岐阜に移籍。司令塔不在のなか、その役割を急遽、小泉は担わざるを得なくなった。

 その時小泉の胸中にあったものはチャンスが巡った喜びか。背負う覚悟か。それとも戸惑いか。
 
「正直、言わせてもらうと……」ゆっくり話し始めた。
「そもそもレッズの関係者もサポーターの方も陽介さんの控えとも、戦力としても考えていなかったと思う。逆に期待されていない分、やりやすかった。ハードルが低かった分、やりやすかった」

 さらに「キャンプで試合に出られるかもしれないなと思い始めていて……。最初のうちというか今も自信はないけど、やれるかどうか分からないけど、できることをやるしかないと割り切って臨んだ」

 こうして始まった今シーズンだったが、リーグ開幕のFC東京戦で1-1のドロー発進となったものの、続く2節・鳥栖戦(0-2)、4節・横浜戦(0-3)、6節・川崎戦(0-5)と2月、3月の8試合の戦績は1勝4敗3分けとうまくはいかなかった。
 

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