強国ドイツの秘密を探るうちに…。村井チェアマンが辿り着いた“驚愕の事実”

2021年06月28日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

村井チェアマンが出合ったある映像

14年W杯ではシュールレ(9番)の2得点などでブラジルに大勝。ドイツの判断スピードは確かに秀逸で、プレーにブレもなかった。写真:Getty Images

 2014年にJリーグのチェアマンに就いた村井氏は、同年のワールドカップで開催国のブラジルを文字通り圧倒したドイツの戦いぶりに心を奪われていた。どうすれば、彼らのような力を発揮できるのかと。強さの根源を探るべく、徹底的にリサーチした結果、ある映像と出合った同氏は驚愕の事実を知ることになる。

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 2014年のワールドカップで腰が抜けるほどびっくりしたのが、準決勝で開催国のブラジル代表をこてんぱんにやっつけたドイツ代表の戦いぶりです(結果は7-1)。14年は私が現職に就いた年で、新人チェアマンとしてドイツの強さに興味津々でした。彼らはいったいどうやってあの力を手にしたのか、と。だから、日本サッカーを発展させるヒントも隠されていると考え、徹底的にリサーチしました。

 その過程で面白い映像に出合いました。EURO予選に臨むドイツU-17代表の合宿所に潜入したドキュメンタリータッチの番組で、そのスタッフが「では今から、選手が集められている部屋に入りますね」という感じで物語は進んでいきます。

 スタッフが目にしたのは、先生たちがマンツーマン形式で選手たちに勉強を教えている場面です。その選手が何を学んでいるかと言えば、導関数。もちろん数学だけではなく、地学や地理など一通りの科目をやっている様子でした。
 
 代表合宿でなぜこんなことをするのか、もしかして補習なのか──。それに対してチーム関係者は以下のように答えていました。

「補習ではありません。この授業はサッカー選手にとって重要。トレーニングの一環と考えています。ピッチに立てば、監督、コーチの声はほぼ届かない。いわば選手には指揮官の如くそれぞれの判断でのアクションが求められます。戦況を見て、どう対応すべきか。複数の選択肢から打つ手をひとつ考え、実行に移す。その5分後にもう1回ピッチで何が起きているかを観察し、考え、選択し、実行する。このサイクルを5分刻みでグルグルとやっていくことがサッカーのクオリティにつながります」

 地理や数学を理解するうえでどこにヒントが隠されていて、何をどう観察すれば答を導き出せるか、その過程を体感することがとても重要で、それが優れた判断力につながると、そういう話でした。これを訊いて、「なるほどな」と感嘆したのを今でも覚えています。
 

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