悩めるドイツ代表、“死の組”突破のキーマンは22歳のMFだ【現地発】

2021年06月15日 中野吉之伴

ロシアW杯以降、停滞しているドイツ代表

ビッグトーナメントでの本格ブレイクが期待されるハベルツ。(C)Getty Images

 現地時間6月15日、ドイツ代表がEURO2020の初戦を迎える。だが、18年ロシアW杯でグループリーグ敗退をして以降、どうにも歯車がかみ合っていない。

 智将ジョゼ・モウリーニョは、英紙『The Sun』で「ヨアヒム・レーブのチームは、W杯予選やネーションズ・リーグでひどかった。歴史的な惨敗(スペインに0-6で完敗)を喫し、ホームでは北マケドニアに敗れている。ここ数年、ここまで悪かったことを理解するのは相当難しい」と厳しい批判をしていたほどだ。事実だけに、反論の余地もない。

 そんな悩める代表チームで、希望の星となっているのがカイ・ハベルツだ。17歳でブンデスリーガデビューを果たすと、レバークーゼンに在籍した4シーズンで118試合出場、36ゴールをマーク。昨夏、21歳でプレミアリーグのチェルシーへ移籍した。

 英国で順調なスタートが切れたわけではない。レバークーゼンからの移籍で生じた違約金は1億ユーロ(約125億円)。のしかかるプレッシャーは常人には計り知れないものがあっただろう。プレーに精彩を欠き、定位置も確保できなかった。

 だが、チェルシーにドイツ人監督トーマス・トゥヘルが就任したことが、苦しんでいたハベルツにとって浮上のきっかけになった。試合を重ねるごとに存在感を増し、レギュラーポジションを奪取。そしてチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝では値千金の決勝ゴールを挙げるのだ。
 
 試合後にハベルツは、「5、6歳のころからすべてのCL決勝戦を見ていた。兄弟と一緒に庭でゴールシーンを真似て遊んでいたんだ。僕がここで1-0のゴールを決めた。なんて言っていいかわからないよ。子供のころの夢が叶った」と笑顔で語っていた。

 代表監督ヨアヒム・レーブは「カイがCL決勝という舞台で、自身のゴールでチェルシーを優勝に導いたのは、まるでおとぎ話のようなストーリーだ。計り知れないクオリティを示してくれている。ポルトの地で達成した素晴らしい成功が、彼をさらに強靭にしてくれるだろう」と称賛の言葉と、さらなる成長への期待を込めたコメントを残している。

 前線のポジション争いはし烈だ。"死の組"と呼ばれるグループFでフランスやポルトガルという強豪と対戦することもあり、3バック採用が濃厚のため、前線は1トップ+2トップ下での起用が見込まれる。

 このうち、主軸としてバイエルンでまばゆいばかりの活躍を見せて復帰したトーマス・ミュラーは当確、チーム内得点王のセルジュ・ニャブリもよほどのことがない限りスタメンから外れることはないだろう。レロイ・ザネ、ティモ・ヴェルナー、ケビン・フォラント、ヨナス・ホフマン、そしてハベルツの5人が残り1つの枠を競うことになる。
 

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