コロナ禍の五輪サッカーは史上最低レベルに!? 金メダルは現実的に手が届く目標だ【識者の視点】

2021年06月14日 加部 究

東京五輪の金メダル獲得は莫大なリターンを見込める

オーバーエイジとして東京五輪出場が濃厚な3人。酒井(左)、吉田(中央)、遠藤(右)はともにA代表でも不動のレギュラーだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 JFAが東京五輪で目指すのは金メダルという結果だけだ。だからこそオーバーエイジ(OA)枠をフル活用して勝ちに出た。五輪を年齢別選手権と捉えるなら、2度も3度も同じ選手を送り込むのはナンセンスだ。ましてセンターバック(CB)やボランチは、歴史的にも有望な若い選手が増えている。本来なら吉田麻也より成長途上の板倉滉をフル活用した方が、将来への布石になるのかもしれない。実際に吉田や彼と同世代の選手たちは、北京五輪での惨敗があったからこそ世界へと飛び出し、その後の日本サッカーの新しい歴史を作ってきた。もしあの時OAを使えていたら、成長にブレーキがかかった選手もいた可能性がある。

 だが東京五輪の金メダル獲得は、さらに莫大なリターンを見込める。勝てばメディアは「世界一」と喧伝し、それを見た子どもたちは強烈な憧れを抱く。危機的な少子化状況で選手人口を回復するには、起死回生の一手で千載一遇のチャンスでもある。
 
 もしコロナ禍で五輪が開催されれば、おそらく東京大会は史上最低のレベルになる。まず欧州の主要クラブは、所属する大切な選手たちを五輪に送り出したりはしない。五輪にそんなリスクを冒す価値は見当たらない。だからシュツッツガルトが遠藤航の参加を快諾したり、冨安健洋の出場に待ったがかからないのは驚きでしかない。いずれにしても、ごく一部の例外を除けば五輪の舞台を踏むのは自国リーグでプレーしている選手に限定されるはずで、そう考えれば日本がグループリーグで警戒するべきなのはフランスよりメキシコで、金メダルを争うライバルは南米勢になりそうだ。

 結局JFAは勝利至上の方針に基づき、欧州から必要な選手をほぼ全員招集することに成功した。開催国ならではの快挙とも言えるが、大会と日本サッカーの水準からして、ほぼこの時点で成功は約束された。実際にOA3人を加えたU-24代表は、フル代表に勝るとも劣らない。今ワールドカップを戦うとしても、スタメンの過半数をU-24代表選手が占める可能性がある。まずOAの3人と冨安はフル代表でもレギュラーなので、最終ラインで替わるとすれば左SBのみだし、一見フル代表優勢に見える2列目でさえ逆転の可能性を秘めている。
 

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