名将ファギーやルーニーが絶賛した元マンUの「消えた天才」。U-24日本代表戦が悪童の“就活の場”に…

2021年06月12日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

ファーディナンドは「あんな14歳を見たことはなかった」

17歳の時にユナイテッドでトップデビューを果たしたモリソンだが、その後は伸び悩んだ。(C)Getty Images

 6月12日にU-24日本代表と対戦するジャマイカで、注目したい選手がいる。MFのラベル・モリソンだ。

 この名前を覚えている方も少なくないだろう。マンチェスター・ユナイテッドの下部組織出身のモリソンは、2011年にポール・ポグバやジェシー・リンガード(現ウェストハム)とともにFAユースカップ優勝に貢献。将来を期待された超逸材だった。

 17歳でトップデビューを飾り、当時ユナイテッドを率いていた名将アレックス・ファーガソンは「これまで契約したどの若者にも負けない天賦の才を持っている」と絶賛。

 先輩の元イングランド代表DFリオ・ファーディナンドも、「ラベルの才能は段違い。あんな14歳を見たことはなかった。1億ポンド(約140億円)クラスの選手になれた」と当時を振り返っている。

 同じくユナイテッドのレジェンドであるウェイン・ルーニーも、「ポグバやリンガードよりも、ずっと上手かった」と認めた天才は、しかし素行に問題があった。

 トレーニングへの遅刻や欠席を繰り返し、ピッチ外でも脅迫や暴行容疑で裁判沙汰に。すっかり"悪童"のイメージが定着してしまい、ユナイテッドから見限られると、その後は11のクラブを転々。昨年9月に、オランダのADOに加入したが、4か月でわずか4試合の出場に終わり、今年1月には契約を打ち切られている。

【動画】試合にチームメイトとケンカをする悪童モリソン
 
 ちなみに、その数少ない4試合の中で、ズウォーレの中山雄太とAZの菅原由勢という五輪世代の2人と対戦しているが、後者に話を聞くと、「どのポジションの選手ですか」とまったく印象に残っていない様子だった。

 イングランドの年代別代表に名を連ねてきたモリソンは、道を踏み外したことにより、約束されていたはずだったA代表デビューを果たすことはできなかった。そして、昨年11月にルーツのあったジャマイカ代表に招集され、初キャップを刻むのだ。

 体調不良のセオドア・ウィットモア監督に代わって、U-24日本代表戦の前日会見に登場したジャマイカ代表のコーチ、ジェローム・ウェイトに、「なぜ素行の悪かったモリソンを代表に呼んだのか」と質問してみると、こんな答が返ってきた。

「ラベルはいい選手だ。力を発揮してくれると思う。彼の持っているサッカーに対するビジョンは比類のないものだ。彼のパフォーマンスを出してくれると思うし、明日の試合も楽しみにしているよ」

 28歳となった悪童は、もう心を入れ替えたのだろうか。ADOを追われて以降、無所属が続いている彼にとっては、この試合も大事な"就活の場"だ。天才と持て囃されたその才能の片鱗を、豊田スタジアムのピッチで見せることはできるだろうか。

取材・文●江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)
 

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