「大会が終わってしまう」吉田麻也の言葉を思い出す、なでしこの看過できない“修正点”

2021年06月11日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

2015年のW杯決勝では開始16分で4失点

A代表戦後に立ち上がりの重要性を口にした吉田(左)。試合の入り方の悪さを指摘した熊谷(右)も思いは同じだろう。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 なでしこジャパンは6月10日、エディオンスタジアム広島でウクライナ代表と対戦し、8-0で圧勝した。

 FIFAランク31位のヨーロッパ勢を迎え、ともに7-0で大勝した4月の2試合(パラグアイとパナマ)よりは拮抗した展開になるかと思われたが、攻守に圧倒。ほとんどの時間帯で一方的に相手を押し込んだ。

 デビュー戦の塩越柚歩が2ゴール・1アシストと躍動すれば、攻守の要である岩渕真奈と熊谷紗希も貫禄のプレーを披露。サイズの大きい相手からCKから2点を奪うなど、収穫が少なくなかった試合で、あえて課題を挙げるとすれば、やはり立ち上がりだろう。

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 開始3分に敵FWに最終ラインの裏をとられ、GKと1対1になるシーンを作られたのだ。相手の技術が高ければ、いきなり先制されていてもおかしくなかった。

「もし失点していたら、試合の流れはまったく違うものになっていた」とまでは思わない。とはいえ、本番を想定すれば、看過できない場面だった。

 高倉麻子監督は、「全体としてはうまくゲームをコントロールして勝ちに繋げられた」としながらも、「(相手の)大きさや間合いの違いもあって、エンジンのかかり具合が遅く、何回かピンチを招いてしまった」と試合を振り返った。「選手が修正をして、徐々にペースを握り、点を重ねてくれた」とその後の対応は評価したものの、立ち上がりの出来の悪さを認めている。

 1年3か月ぶりの代表戦となった熊谷も、「勝てたのは良かったが、(試合の)入り方や球際の戦い方はもっと良くしていかないと本大会は勝てないと思う」と課題を指摘した。

 例えば、2015年の女子ワールドカップ決勝で、日本は3分にアメリカ先制点を奪われると、その後も立て直せないまま16分までに4失点。結局、2-5の大敗を喫した。今回はウクライナの決定力不足に助けられたが、本番でメダルを争う相手はこの隙を見逃してくれない。

 3日に行なわれた男子の"兄弟対決"でも、A代表に2分で先制を許したU-24代表のキャプテン吉田麻也は、「これが本番だったら、大会が終わってしまう可能性がある」と開始早々の失点に苦言を呈していた。

 本番を前に「立ち上がりの重要性」を再認識したことも、この試合の大きな収穫と言えるかもしれない。

 取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)

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