【川崎<全試合トラッキングデータ付き>】中村憲剛が“風間スタイル”を巡る苦悩を激白。「サッカーって難しいね」

2015年05月24日

鳥栖戦の前半に見せた「ロングボール主体」は不発も――。

4-4-2から3-4-3に変更した鳥栖戦の後半は、武岡(17番)らの仕掛けも増えて川崎の攻撃が機能。ただ今後の課題について、「(武岡)優斗やエウソン(エウシーニョ)にボールが出た後にどうするか」と語る。 写真:徳原隆元

 川崎らしくない――。風間体制下のスタイルを知る人であれば、鳥栖戦の前半は誰もがそう感じただろう。
 
 前節のG大阪戦で、川崎は前半だけで三度の布陣変更を施したが、13節の鳥栖戦でも前半に4-4-2、後半に3-4-3を採用。システムだけでなく、サッカーのスタイルもまた前後半でガラッと変わった。端的に言えば、前半は"ロングボール主体"、後半は"ショートパス主体"だ。風間八宏体制で継続してきたのは後者のスタイルだが、鳥栖戦の前半は杉本健勇にロングボールを集める戦い方を見せた。
 
 風間八宏監督はその意図をこう明かす。
 
「今日は前から来る相手に対して、早い攻撃を仕掛けるところで長いボールもOKだと言いました。ただ、それによって結果的に判断が非常に遅くなり、自分たちのリズムがなかなか作れなかった」
 
 ボランチで攻守の舵取りに専念した中村憲剛は指揮官の意図を理解しながらも、「ロングボールを蹴り合うと、向こうの土俵になってしまう」という危険性を危惧していた。鳥栖の前線にはリーグ屈指のエアバトラーである豊田陽平が待ち構えており、ロングボールの蹴り合いになれば相手に分がある。果たして、前半の川崎は車屋紳太郎の突破を機に先制点こそ奪ったものの、攻撃の形をまったく構築できなかった。
 
「CBとFWのマッチアップで、ウチが勝てれば優位になるし、逆にそこで拾われると向こうの得意なパターンになる。本来やりたい形ではなかったし、相手に(守備を)ハメさせないという意味では後半のほうが良かった」(中村)
 
その言葉どおり、川崎が後半に3-4-3にシステムを変更すると徐々にパスが回り、普段の顔をようやく見せ始めた。とりわけ狙っていたのは鳥栖の右サイド、川崎から見た左サイドだ。武岡やレナトが高いポジションを取り、集中的に仕掛けて翻弄。中村はその時の状態をこう振り返る。
 
「前半からペク・ソンドン選手の絞りが甘かったので、(武岡)優斗にはその話をしていた。丹羽(竜平)選手に捕まらないところで、かつペク・ソンドン選手の裏に入ってほしいと伝えていた。そうしたらレナトが、相手のCBとSBの間にポジションを取って、丹羽選手もどっちに行っていいか分からない状態だった」
 
 さらに後半の攻勢を支えたのが、3バックの左右に入った谷口彰悟と井川祐輔の上がりだ。武岡とエウシーニョの両ウイングバックが強気のポジションを取り、鳥栖の中盤が引っ張られる形となったため、谷口と井川が比較的フリーの状態でボールを受けられる場面が増加。「前半は起点を作れなかったけど、後半は井川と彰悟のところで一回落ち着いた。前半は豊田選手と池田(圭)選手がボランチのところを締めていて、後半もその形だったから、それであれば空いているDFがボールを運んで、サイドから崩すという狙いだった」と中村は語る。
 
「3-4-3にして鳥栖の前への勢いを消せたし、相手の前からのプレスを外すことはできた。今後の問題は、優斗やエウソン(エウシーニョ)にボールが出た後にどうするか」
 
 中村は仕掛ける際の課題を口にしたが、この日に生まれた葛藤や逡巡は"より大きなもの"だったという。その誘因となったのが前半に見せたロングボール主体の攻撃で、"より大きなもの"とは川崎のスタイルに関するそれだった。

次ページ「勝てなかったら、このサッカーに対してザワザワしてくるわけです」(中村)

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