【短期連載】『AKB48の経済学』著者に訊く“Jリーグと日本経済”第2回「Jリーガーの年俸とデフレ脱却後の未来図」

2015年05月22日 石田英恒

Jリーガーとアイドルに共通する『やりがい搾取』。

有名になるまで、アイドルの報酬は薄給であるケースが少なくないが、それでも「やりがい」があるから頑張れる。こうした状況はサッカー界にも言えることだろう(写真はイメージ)。(C)Getty Images

『AKB48の経済学』著者がJリーグを多角的に考察する短期集中連載。
 
 第2回は、Jリーガーの年俸について掘り下げてみたい。
 
 デフレの影響もあり、サッカー選手の年俸は低迷してきた。
 
 Jリーガーの1億円プレーヤーは10人程度しかいない。年俸の平均でこそ2000万円程度だが、選手でいられる期間は他のプロスポーツに比べて圧倒的に短く、なかにはJ2やJ3では年収100万~200万円台の選手もいるという。
 
 Jリーグは、プロ野球などと比べ、お金の面に関しては「夢のない世界」になってしまっていると言えるが、たとえ景気が回復したとしても、単純にサッカー界の利益が上がる訳ではないようだ。
 
 日本経済思想史と日本経済論を専門とし、リフレ派論客として活躍するだけでなく、AKB48などポップ&サブカルチャーにも詳しい経済学者の田中秀臣氏に話を聞いた。
 
――◆――◆――
 
――なぜ、Jリーガーの給料はこんなにも安いのでしょうか?
 
「給料が安くてもサッカー選手(仕事)を続ける動機を、専門用語で『補償賃金仮説』、別の言葉で言い換えると『やりがい搾取』と言います。自分の実力に見合った賃金が得られなくても、『やりがい』があるから頑張るということです。まさにJリーガーに当てはまる言葉なのかもしれません。
 
 クラブは不況下でお金が回らないので、少ないお金でサッカー選手を調達しなければならない。しかし、結局、サッカー選手になりたいという人は大勢いるので、彼らには『やりがい』を与えることで我慢してもらうのです。憧れのプロサッカー選手になれるのだから、給料が安くても我慢しろと……。そして、多くの選手は『やりがい』があるから我慢して頑張ります。
 
 これは、アイドル業界の現場でもよく利用される手法です。スターダムに乗る前のアイドルの報酬は、基本的に月収ゼロから、あっても月三万円程度の薄給ですが、みな『やりがい』というところで、気持ちの折り合いを付けています。自分の賃金の低さを『やりがい』という理屈で、なんとかごまかしているとも言えます。
 
 サッカー選手は活動年数が少ないので、若い頃に賃金が低く抑えられてしまうと、生涯所得も当然低くなってしまいます。しかし、それでも、『やりがい』というところで、自分の給料の低さを補っているという見方がひとつあります」

次ページサッカーのスキルは他の職場での応用性ほぼゼロ。

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