イーブンな戦いになるための前提条件を打ち砕かれたU-24代表。それこそがA代表との差

2021年06月05日 河治良幸

一つひとつのプレーでA代表が上回る部分が多かった

例えば中盤に関しては、A代表はコンセンサスが見られた一方、U-24代表は攻撃も守備も個人個人になり過ぎたところがあった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[強化試合]日本代表 3-0 U-24日本代表/6月3日/札幌ドーム

 試合の入りとプレーの強度の両面で、A代表が差を示す結果と内容だった。「みんな気合が入ってましたし、負けられないと話していたので、そういう気持ちを出せた、入りを大事にと話していた」と前半2分の先制ゴールを決めた橋本拳人が振り返るように、キックオフと同時にA代表が勢い良く攻勢をかけて、右SBの室屋成の突破からCKを取ると、鎌田大地のキックをニアで大迫勇也がすらして、橋本がフリーで飛び込んだ。

 U-24代表側は鎌田が蹴った瞬間、大迫に前に出られてしまった田川亨介と中山雄太、ファーで橋本をフリーにしてしまった橋岡大樹と町田浩樹の対応から問題点を言及するのは簡単だが、根本はそういう問題ではないだろう。

 代表戦において多くの試合ではガツンと相手にぶつけるチームが多く、日本代表も例外ではない。そこで最初にやられてしまうと、なかなか立て直せずに時間が進行してしまうし、逆にそこで勢いに乗れば序盤戦をかなり有利に進めることができる。それを良く分かっているA代表の選手たちが身をもって示したと言える。

 筆者の見立てとしては、最初の数分をU-24代表側がしのげれば、内容的にもある程度競ることができると予想していた。イーブンな戦いになるための前提条件をA代表に打ち砕かれた形だが、それこそがA代表とU-24代表の差を示しているとも言える。

「個人的には(A代表で)普段やってる人たちで手応えもあったし、自分は壁を感じなかった」と振り返る久保建英も、やはりゲームの入りに関しては「彼らとしてはプレスをかけるだけでこっちは蹴ってしまう。そこで彼らの想定を上回ったら難しい試合にできた」とチームの課題を挙げると同時に、ビジョンを持ってゲームに入ることで同年代の相手を上回ることができるということを考える良い機会になったようだ。

 最後まで試合に出ることがなかったオーバーエイジの吉田麻也は「A代表は(ミャンマー戦の前から)ずっと一緒にやっていた。一方のU-24はワクチンも打って、1日しかまともに練習できなかったり、コンディションの差は確かにあった」と気遣いながらも「1点目みたいな失点をすると大会自体が終わってしまう」と厳しさも示している。

 ただ、久保も指摘するように、今回の入りの差は単に気持ち的な意味でのメンタルの差ではないということ。やはりチームというのは個々が高いモチベーション、やる気に満ち溢れていたとしても、試合に向かう共通ビジョンが無いと、ファーストプレーで相手に上回られたところからどんどん崩れていってしまう。
 
 そうした立ち上がりの差を踏まえて、その後の試合を振り返ると、やはり一つひとつのプレーでA代表が上回る部分が多かった。例えば中盤に関しては、A代表のボランチは橋本が前目で2列目を積極的にサポートして、守備ではプレッシャーをかける一方で、守田英正はミャンマー戦で遠藤航がやっていたような後ろ目で最終ラインの手前を幅広くカバーしていた。

「僕がビルドアップに入ることのほうがたぶん多かったと思います。ただ、2人ともボックス・トゥ・ボックスで前後に走って行くのが好きなので、そこは役割分担っていうふうには決めてはいないですけど、お互いそういう意識ではやってました」(守田)

 攻撃では中盤の底、時にはディフェンスラインに落ちてシンプルにつなぎながら、タイミングを見てロングスプリントでアタッキングサードを狙うコンセンサスが見られた。一方の板倉滉と中山雄太はA代表側の強度に受け身に回った部分もあるが、攻撃も守備も個人個人になり過ぎたところがあった。
 

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