【三浦泰年の情熱地泰】若きクラッケばかりでも試合には勝てない。J3時代の経験と重なったU-24の戦いぶり

2021年06月04日 サッカーダイジェストWeb編集部

J3のU-23チームにも富山、鹿児島の選手と比べれば明らかに天才が集まっていた

後半途中から出場した堂安。随所に個のレベルの高さは見せつけた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

「クラッケ(CRAQUE)」
 僕が留学した経験があるブラジルのサッカーの世界では、人には真似できない天才的な選手を見つけると「クラッケ(クラッキ)」がいると表現する。日本語では、「特別な天才」と訳すらしい。

 3日の日本代表vs.U-24日本代表の試合にはピッチに多くの日本のクラッケがいた。

 特にU-24には才能溢れる選手が揃っていた。

 それなのに立ち上がりの失点。試合は3-0で日本代表が簡単に勝利した試合であった。

 試合前は、日本代表がやりづらいとか、U-24はモチベーションが高いとか、あるいは夢の試合などと言われていたが、日本代表が簡単に先制し、簡単にダメ押し点を奪って勝利し、U-24は奪われて敗戦した。

「おっクラッケ!」と特別な天才?と思うような久保建英のような選手がズラっと並ぶがどこか物足りなさを感じたU-24。幼稚なサッカーに見えるのは日本代表チームとの差から感じとれたのであろうか?

 皆はこの試合を、どのように見ているのであろう? そんなことを感じながらテレビ観戦していた。

 ふと思ったのは、J3リーグ時代のU-23との試合であった。

 当時はFC東京、セレッソ大阪、ガンバ大阪の3クラブがJ3に参戦していた。まさしく彼らはクラッケであり、エリート集団であり、タレントでもある。

 富山、鹿児島の選手と比べれば明らかに天才が集まっていた。

 しかし試合をやれば結果は少し違う。一人ひとりは上手いが試合巧者ではない。2018年鹿児島ユナイテッドFCはU-23クラブと6試合を行ない、5勝1分であった。昇格したシーズンにおいて大きな勝点になった。試合を落とせば昇格争いにとって大きな痛手となる。

 選手個々を見れば久保もいた。堂安も、食野もいた。日本代表でプレーした小川もいた。トップでプレーできない若い選手がU-23でプレーしていた。

 そうでありながらU-23チームが優勝したことも、昇格圏内に入ったこともなかった。僕が東京ヴェルディで指揮を取った年も平均年齢22歳台で望んだが、なかなか勝ち星を積み上げることは簡単ではなかった。

 やはりこの年齢(経験)差は大きいのだと思う。
 
 しかし数年経てば、彼らがクラブの中心となり必要な選手に育っていく。今では海外でプレーするようにもなっていく。

 最初の失点シーン。ニアで大迫勇也にスラされてファーで橋本拳人に詰められて失点。コンセプトが同じチームで起こり得る"セオリー"での失点には、凄い甘さを感じる。オリンピック本番では絶対にやってはいけない。時間帯も悪く、力の差を考えると、ほとんど勝利の可能性をなくした。

 それでも次の試合では、どんなパフォーマンスを見せるか分からないのが、この年代の面白い所でもある。

 J3リーグでも大敗の後に圧勝したり、その逆に圧勝した後の完敗であったり。これは、J3リーグのU-23あるある話。波があり、分析も難しく、読みづらいところがあった。

 この試合だけで評価はできないし、悲観してもいけないであろう。
 

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