【三浦泰年の情熱地泰】サッカー界も考えたい大坂なおみの会見拒否問題。彼女の声を無視すべきではない

2021年05月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

僕は会見を拒否したことはないし、したいと思ったこともなかったが…

全仏オープンでの試合後の会見を拒否して話題となっている大坂なおみ。(C) Getty Images

 世界ランキング1位、トッププレーヤーの言葉は無視してはいけない。

 世界を引っ張る立場の彼女が会見拒否を宣言する。単なるワガママではないであろう。

 彼女は会見も含めてプロとしての役目、仕事でもあることくらいは充分に理解しているはずだ。知っている上での決断だと察しはつく。

 何が起こっているのかをしっかりテニス界だけではなく、各業界、自分たちに置き換えて考えるべきだと思う。

 その覚悟とはきっと選手生命を縮めることに繋がることもあるかもしれないし、たくさんの人から批判を浴びる可能性もある。

 今までに彼女を否定してきた人もいるかもしれないが、逆に彼女を応援してくれている人は何倍もいるはず。彼女がその応援している人へのメッセージ(会見)を拒否するのだから、彼女に相当な覚悟を抱かせるような心が痛む何かがあるのであろう。

 その行為に対して220万円の罰金が課せられ、その罰金がメンタルケアに使われる……みたいな事を言っている。

 Jリーグであればこの220万円さえもサッカーで稼ぐことの出来ないプロ選手や支払うことの出来ないプロクラブがある。そんなことを考えれば、彼女はお金の問題ではなく、そしてその罰金の支払いは心の痛みに比べれば安い物だと思うであろうが、少し複雑な出来事でもある。

 これに対して様々な考えや意見はあると思う。

 この出来事で誰が何を感じなければいけないのか? と考えた時に、僕は聞き手(インタビューする人)がいかに選手の立場になって、イヤ答える人の立場になって聞いていたか?(インタビューしているのか?)

 Jリーグで言えばヒーローインタビューと監督インタビューがある。監督は勝敗に関係なく会見があり、試合前にも両監督はインタビューに答える決まりとなっている。

 僕はそれを拒否したことはないし、したいと思ったこともなかった。闘ったステージの違いはあるが、その質問にはいろいろな質問はある。
 
 特に負けた時には、感情を揺さぶるような質問を意図的にするような場合もある。

 それはプロスポーツの世界だけでなく、政治家や芸能人、アーティスト、どんな世界にも多かれ少なかれ存在することだろう。

 そしてそれはプロという公的立場であれば義務であり、拒否という選択は許されないと考えていたのが正直なところだ。

 しかし、プロ選手はたくさん存在するが、大坂なおみはこの世の中にひとりしか存在しない。 彼女が「心の健康状態を守るため」精神的負担を強調しているのだから、これを批判する前にしっかり向き合って考え、なんらかの見解が示されるべきだ。

 それは昔からのルールという一言で済まさず、インタビュアーも、もう一度、自分たちの言動がどうであるかを考え、整理し、改めるべきところは改めなければいけない。

 そして聴く側も応える側も、同じ船に乗っているともに闘う同士である関係に気づけるかが大事なのであろう。そこには「自分のことしか考えていない」ではいけない。
 

次ページ本来、会見を受けるかどうかは協会が定めることではない

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