【松本】春が過ぎて“充実期”到来。120パーセントの力で巻き返しを誓う

2015年05月17日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

殊勲の前田はチームメイトへの感謝を口にする。

中盤の攻防で存在感を放った喜山(11番)をはじめ、チーム全員が守備意識の高さを存分に発揮し、完封勝利を収めた。 写真:徳原隆元

 90+5分、阿部吉朗の追加点が決まり、ほぼ勝負が決した瞬間、ちょうど2週間前に田中隼磨が放った力強いひと言が脳裏をよぎった。
 
「ここからが俺たちの見せどころ」
 
 5月2日の9節・新潟戦は1-2で敗れ、15位にランクダウン。昇格組の一角としてJ1の厳しい戦いにさらされながらも、歴戦の背番号3は闘志を漲らせていた。

【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・12節
 
 果たして、田中の言葉は現実のものとなった。
 
 10節・甲府戦は2-0、11節・鳥栖戦は1-1。迎えた今節の神戸戦は2-0。3試合負けなしは今季初で、順位も暫定ながら14位から一気に9位へとランクアップした。
 
 0-0で終えた神戸戦の前半を振り返れば、得点のチャンスがある一方で、失点してもおかしくない場面はあった。
 
 24分、森岡亮太の縦パスに小川慶治朗が抜け出し、寄せてくる大久保裕樹をかわしてGKと1対1の状況を作られる。しかし、小川の至近距離からのシュートに、松本の守護神・村山智彦がファインセーブを見せ、決定的なピンチを切り抜けた。
 
「小川選手が大久保選手と入れ替わって抜けてきた瞬間、距離を詰めよう、と。はっきりとは分からないですけど、そこまでシュートコースがなかったと思うし、その時点で僕のほうが優位に立てたはず。それで止められたのではないでしょうか。良い距離感で対峙できました」(村山)
 
 村山は、42分の高橋祥平の強烈なミドルにも果敢なセービングで事なきを得るなど、終始、安定したパフォーマンスで松本のゴールを守り切ってみせた。
 
 守護神の奮闘を含め、チーム全体の守備意識の高さは際立っていた。
 
 大久保や喜山康平、岩間雄大が身体を投げ出して懸命なシュートブロックを試みる。岩上祐三の高い位置からの精力的な二度追い、三度追いは見慣れた光景で、局面の勝負では、田中が狙いすましたボール奪取を披露。飯田真輝の高さは盤石の強さを誇っていた。
 
 勢いをもたらす先制弾を決めた前田直輝は、チームメイトへ感謝する。
 
「ゴールは気分が良いものですけど、ディフェンスラインの選手だけでなく、チーム全体で、みんなが走って、身体を張って勝ったからこそ、こうして喜べると思っています」

次ページ勝点3への一途な執念で、時計の針を進める。

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