【広島】佐藤寿人――理想と現実の狭間で見せるエースの意地

2015年05月17日 小田智史(サッカーダイジェスト)

最初の決定機で生まれた「泥臭く不細工なゴール」(佐藤)。

佐藤はボール奪取の瞬間に曽ヶ端(右)に左足を蹴られながらも、痛みに耐えて先制弾を突き刺す。エースの意地が詰まったゴールだった。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 鹿島戦の51分、GK曽ヶ端準がDFからのバックパスを受けた瞬間、佐藤寿人が一気にスピードアップする。トラップが大きくなったところを鮮やかにかっさらい、無人のゴールに流し込んでチームに待望の先制点をもたらした。

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 自身のファーストシュートにして、最初の決定機で生まれた「泥臭く不細工なゴール」(佐藤)。曽ヶ端が「(佐藤がいるのは)もちろん分かっていたし、スピードに変化をつけてきたのも分かっていたけど……」と悔やむほどのしたたかさに、エースの意地が集約されていた気がする。
 
 広島は3-4-2-1のシステムこそ変更はないが、今季はシャドーの顔ぶれが一新。チームとしては、柴﨑晃誠とドウグラスを先発に固定した6節のFC東京戦以降、シャドーと両ウイングバックが連係した攻撃がひとつの攻撃パターンとして確立されつつあったが、佐藤はストライカーとして"葛藤"と戦っていた。
 
「自分はポストプレーヤーではなくフィニッシャーだと思っているし、一番前にいてもいかにシュートを打てるかを考えている」と話す佐藤だが、ポストプレーやチェイシングに追われ、1試合平均シュート数は1.17本(14本/12試合)。シュートを1本も打たずにピッチを去った試合は3試合を数え、MF青山敏弘やDF塩谷司、自身の約半分の時間しか出場していない浅野拓磨(1.50本/15本・10試合)をも下回るチーム5位に甘んじている。
 
 出場時間が減っている点を差し引いたとしても、過去3年(12年:2.47本[84本/34試合]、13年:1.94本[66本/34試合]、14年:1.79本[52本/29試合])に比べてゴールチャンスが減っているのは明らかだ。そんななかで今季の3得点はすべて、当該ゲームで訪れた唯一のチャンスを仕留めたもの。そのあたりは、さすがと言うべきだろう。
 
「今年はハードワークするのは当たり前。FWとしてゴールを求められるなかで、ピッチに立つ時間は20代の時と違って60分、70分(に減っている)。簡単ではないけど、自分の中で上手く整理して、なにができるか上積みするしかない」

次ページストライカーとしての葛藤を乗り越え、さらなる高みを目指す。

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