崩し方のベースがないように映るG大阪。そろそろ「HOW」に対する「by」の一端が欲しい

2021年05月09日 飯間 健

目指す攻撃サッカーを貫くのか、“ハードワークで粘り強く”に回帰するのか

目指すべき攻撃サッカーを思うように表現できずにいるG大阪。CB昌子は「パスを出しても戻ってくることが多い」と語る。写真:塚本凛平(サッカーダイジェスト写真部)

 日々の練習を少しでも見ていれば、違うイメージを持って、違った言葉で伝えることができるのかもしれない。ただ我々メディアは新型コロナ対策で1年以上、練習を見られていない。結果でしか判断できない。

 リーグ9試合で2得点。0-2で敗れた8日の川崎フロンターレ戦後、宮本恒靖監督は「数はそれほど多くなかったけど、シュートチャンスを迎えた時に枠に飛ばせればなと思います」と答えた。決定力不足の前の「数はそれほど多くなかった」という決定機の少なさが、現在のガンバ大阪が抱える問題の本質なのではないか。

 サッカーは得点を取られなければ負けないが、得点を取らないと勝てない。確かに宇佐美貴史の左足シュートが決まっていれば、FWパトリックのヘディングが突き刺さっていれば……というのはある。それでも今季の810分間を見ていて強く感じるのが「HOW(どのように?)」の部分で伝わってくるものが少ないことだ。

 よく言えば個のアイデア、即興性。悪く言えば属人的。攻撃的なサッカーを目指すと言いながら、チームに崩し方のベースがないように映ってしまっているのが悲しい。

 川崎戦後、DF昌子源はこう口にした。「距離感の良さが川崎さんとは違う。センターバック(CB)がボールを持った時に"やはり遠いな"と。パスを出しても戻ってくることが多い。川崎さんはワンタッチで通せる距離で全員がいる」。

 立ち位置での迷い。またセレッソ大阪戦後、MF矢島慎也は「サイドにボールを持っていっても、相手CB2枚が動いていなくてクリアされたり、セカンドボールを拾われたりしている」と話した。

 連係や連動の未確立。それらが「自分たちも(スペースに)走りたいが、状況が良いときじゃないと走れない」(矢島)という攻撃の停滞感や、個のパフォーマンス低下への影響を生み、1試合平均の「敵陣エリア内侵入回数」12・5回の少なさにもつながっているのではないか(Jスタッツ公式データ参照。ちなみに川崎は同25・15回、横浜は同24・9回/7日時点)。
 
 昨季リーグ2位のベースとなった粘り強い守備を継続しつつ、川崎や昨年の徳島のような攻撃的サッカーにトライしている今シーズン。

 何年間も積み上げてきた他クラブのような攻撃の形は、一朝一夕で手に入らないのは分かっている。

 新型コロナによる活動停止で沖縄キャンプから取り組んできたものがリセットされた不運も分かっている。

 そして4クラブが降格するレギュレーションのなか、現時点ではクラブ首脳陣の信頼が変わっていない事実も確認している。

 就任してから過去3年間、いつも苦しい時に"神の一手"で局面を変えてきた指揮官。目指す攻撃サッカーを貫くのか、それともハードワークで粘り強く勝点を奪っていった昨年に回帰するのか。

 そろそろ「HOW」に対する「by(~よって)」の一端が欲しいし、それが仕込まれているというのを信じたい。

取材・文●飯間 健

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