識者が判定! 久保建英と三笘薫、いま凄いのはどっち?<2>勝敗は明らかだが、困難の中にこそ機会はある

2021年05月09日 吉田治良

「現時点で」という条件の下でなら白黒ははっきりする

日本を代表する二人のアタッカー、久保(左)と三笘。いま凄いのはどちらなのか? 写真:Getty Images/サッカーダイジェスト

 ヘタフェの久保建英と川崎フロンターレの三笘薫は、いまの日本サッカー界が誇る最も魅力的なアタッカーたちだ。ともにウイングを主戦場とし、ドリブルで仕掛けてチャンスを生み出す。活躍の舞台は異なるが、果たして両雄を同列に論じた時、現時点でより凄いのはどちらなのか。スポーツライターの吉田治良氏に意見を伺った。

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 元ポルトガル代表のルイス・フィーゴは、現役時代にこう豪語した。

「1対1になったら勝負しないわけにはいかない。なぜなら俺はドリブラーだからだ」

 ドリブラーは仕掛けてなんぼ、ということだろう。ただし、マーカーを鮮やかに抜き去れば喝采を浴びる一方で、ボールロスト時の代償も大きい。抜いたか、奪われたか。二つに一つの判断基準だから、成功と失敗のコントラストが素人目にも分かりやすいのだ。

 それゆえ、ドリブラーはメンタルにパフォーマンスが大きく影響される。弱気の虫が疼けば、勝負はできない。リスクと批判を恐れず、勇気をもって仕掛けられるかどうかで、ドリブラーの価値は決まるのだ。

 その点において、久保建英と三笘薫に優劣は付けがたい。どちらも対峙するDFと勝負することに躊躇がないのは、磨き上げてきた技術に絶対的な自信があるからだろう。
 
 しかし、「現時点で」という条件の下でなら、白黒ははっきりする。Jリーグで敵なしの川崎フロンターレで中核を担う23歳と、ラ・リーガで残留争いに汲々とするヘタフェでベンチ要員に甘んじる19歳では、勝敗は誰の目にも明らかだ。

 もっとも、環境面を無視して断じるのは少々乱暴かもしれない。ドリブラーはメンタルにパフォーマンスが左右される生き物だが、そのメンタルに影響を及ぼすのが「環境」だからだ。

 今季開幕時に在籍したビジャレアルでも、冬に加入したヘタフェでも、久保は守備面の不安とフィジカルの弱さを指摘され、十分な出場機会を得られていない。そして短い時間でアピールしようとの焦りが状況判断を狂わせ、ピッチに立ってもプレーが空回りし続けている印象だ。

 例えば昨年10月、ビジャレアル時代のアトレティコ・マドリー戦。0-0の85分に投入された久保は、自陣から二度に渡って強引にドリブルで持ち上がろうとして、いずれもボールを失っている。一度目はショートカウンターからあわやという場面も作られた。強豪相手のアウェーゲームだ。無理をする必要はなかった。

【動画】ガンバ戦、三笘薫の度肝を抜くドリブル突破からの鮮烈弾!
 

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