バイエルンの監督就任が発表された、33歳ナーゲルスマン。青年指揮官の知られざる経歴とは?【現地発】

2021年05月07日 中野吉之伴

28歳でホッフェンハイムの監督に就任し、ブンデスデビュー

28歳でブンデスデビューを果たし、来シーズンからはバイエルンの指揮官となるナーゲルスマン。(C)Getty Images

「28歳でブンデスリーガの監督に就任」というインパクトは、今思い返してみてもやはり強烈だ。

 ユリアン・ナーゲルスマンが、ホッフェンハイムで監督デビューをしたのが2016年。歴代最年少監督が、当時降格間違いなしと思われていたクラブで残留を果たしたかと思えば、翌シーズンはリーグ4位、17-18シーズンは3位と、ドイツトップレベルのチームへと変身させてしまった。

 19年にRBライプツィヒへ移籍した後も、そのキャリアは輝きを増した。チームのクオリティをさらに成長させ、昨シーズンはチャンピオンズ・リーグの準決勝まで導いた。この時点で、ドイツのみならず欧州中の注目を集める存在だったといえる。

 今シーズンは常に優勝争いに絡み続け、バイエルンとのトップゲームで勝利を収めさえすれば、最後まで可能性を残すことができるところまで王者を追い詰めた。残念ながら4月3日の直接対決を0-1で落とし、勝点が7ポイント差まで広がってしまったため、優勝の可能性はほぼ消滅してしまった。だが、それでもまだ歴史の浅いクラブでここまで食らいついたことは、健闘したといっていいだろう。
 
 そして先日、この青年監督が来シーズン、ハンジ・フリック監督の後を継いで、バイエルンを率いることが電撃発表された。このニュースは世界中を驚かせたが、選手時代を知る人はそう多くないのではないだろうか。

 バイエルン州の小さな村にあるFCイッシングというクラブで、ナーゲルスマンはサッカーを始めた。このクラブの体操部門でナーゲルスマンの母親が指導者をしており、家族にとってここはまさにホームクラブだった。

 幼いころからその才能を高く評価されていたナーゲルスマンは、U-12チームからFCアウグスブルクの育成チームへ移籍し、U-17からは1860ミュンヘンでプレー。その後、2007年にはアウグスブルクのセカンドチームへ移籍したが、膝の負傷が問題で、08年に選手としての引退を決断した、とされる。

 しかし、実はそれ以降も全くプレーをしていないわけではなかった。今から約10年前の10-11シーズンのことだ。FCイッシングの会長ハンス=ペーター・ヴァーグナーが友人と一緒にクラブハウスで友達とコーヒーを飲みながら、グラウンドを眺めていた。

「1860ミュンヘンのユニフォームを着て友達と一緒にボールを蹴っている青年の姿を見た。あれは誰なんだい?ってたずねたら、ユリアン・ナーゲルスマンという名前だったんだ」

次ページ選手引退後も、監督業をしながらアマチュアでプレー

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