「1歩か2歩、下がる。また3歩、出るために」三浦監督の胆力が、降格圏転落の相模原を再び引き上げる

2021年04月25日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「まだ舵を切るのは早かったかもしれない」

チームの成長には確かな手応えを感じている。どこで次のステップに進むか。その見極めと実践には常に神経を尖らせている。写真:徳原隆元

 0-2で敗れた9節・ヴァンフォーレ甲府戦のあと、SC相模原の三浦文丈監督は悔しさを滲ませつつも、「自分自身に緩さがあった」と自省する。

「基礎のところができつつあって、ある程度、良い感じで戦えている。だから、次のところに徐々に行こうかな、と。(8節の)ジュビロ戦も、いつもより自分たちがボールを持つ時間が増えて、コンビネーションから得点も生まれた。良い感じでステップアップしていると思っていた」

 そのジュビロ磐田戦は1-2で競り負けた。試合には勝てなかったが、内容はポジティブなものだったと受け止めている。0-1で迎えた19分、ボランチの芝本蓮からパスを受けた左サイドの舩木翔がクロスを入れ、逆サイドでスタンバイしていた藤本淳吾がヘッドで折り返す。ボールは相手DFに当たったが、こぼれ球をユーリが押し込む。左右に揺さぶり、ゴールをこじ開けてみせた。

 磐田戦の前まで、相模原は7試合を消化して1勝4分2敗の勝点7で17位。開幕当初は重心の低いサッカーで、なによりも失点しないことを最優先に、粘り強く勝点を積み上げていた。6節のアルビレックス新潟戦では、開幕5連勝で首位を走る相手に2-2と引き分けて、貴重な勝点1をもぎ取ってみせた。

 試合を重ねるごとにチームは確かな手応えを掴み、攻撃に出る回数もチャンスの数も着実に増えていった。リトリートしてから前に出ていく。それはできるし、最初から攻撃も守備もアグレッシブに、より主体的に戦えるようにもなっていた。守備だけのチームではない。攻撃面でも見せ場を作れている。

 当時、三浦監督は「自分の予想よりも、ちょっと早いぐらいのテンポでいけている」と語っていた。引き分けの捉え方も"負けなかった"から"勝てなかった"になっているのではないか――そう水を向けると「そういう雰囲気になっているね」と応じる。
 
 ただ、甲府戦の黒星で、一度立ち止まることにした。

 磐田戦までに感じていた好感触を「確固たるものにするべく」、甲府戦でも強調した。これで目に見える成果を出せれば、さらに自信も深まるはず。だが、結果は完封負けを喫して、今季初の連敗に。警戒していた形からふたつの失点。「これほどプランがハマらなかったことはない」と唇を噛む。

「まだ舵を切るのは早かったかもしれない。あまりにも一気にやりすぎたかなというのが自分自身の反省」

 ピッチ上で選手たちが見せるパフォーマンスに応じて、戦い方をアレンジする。チームを成長・進化させるために、三浦監督のそれは決して間違ったアプローチではない。実際、そのタイミングを常に見計らっていた。思いつきではない。慎重に事を進めていたのだ。
 

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