【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「株式譲渡、ブランド展開、本田…ミランの未来は“アジア”次第」

2015年05月06日 マルコ・パソット

続くベルルスコーニとビジネスパートナー候補による駆け引き。

目標を失い、無残な敗北を続けるミラン。そしてピッチの外では、クラブの株式譲渡をめぐって話が二転三転するなど、どちらも方向性が定まらない。 (C) Getty Images

 シルビオ・ベルルスコーニがミランのオーナーになってから、来年の2月で30年になる。しかし30周年を目前にして、ミランはベルルスコーニ体制下で最もひどいシーズンを過ごしてしまった。
 
 何もかもが目茶苦茶なミランで今、確実に言えることがある。ひとつは、ベルルスコーニがミランの株を売らなければならないであろうということ。株の過半数以上か、それ以下かは分からないが、とにかくチームを立て直すためには、国外からの投資を呼び込まなくてはならない。
 
 しかし同時に、ベルルスコーニはミランから手を引く気はさらさらない。彼のそばにいる者たちは、ベルルスコーニから何度も同じ言葉を聞かされている。
 
「ミランを売ると考えるだけで、まるで近しい者が亡くなったかのような気持ちになる。しかし、もうこのままでは手詰まりだ」

「チームがこれほどひどい状態の時に、ミランを離れることはできない。サポーターにとって、私はいい思い出でありたい」
 
 センチメンタリズムと現実主義に、ビジネスが加味された言葉である。ここで忘れてはいけないのは、ベルルスコーニはクラブオーナーや政治家である前に、叩き上げの商売人であることだ。
 
 ミランの今シーズンがいかにひどい状態だったかは、データからも簡単に読み取れる。現在、ミランの勝点は43。仮にこのあとの4試合全てで勝ったとしても(まずあり得ない話だが)、セリエAが20チーム制になって以来、ミランが挙げた最低の勝点である。
 
 また、ここまでの勝率はわずか29パーセント。これもまた、29年間のベルルスコーニ・ミランのなかでは最低の数字である。その他にも、ネガティブの記録を挙げたらきりがない……。
 
 この状況を打開するためにも、ベルルスコーニはこれまでの方針を変え、新鮮な資本を呼び込もうとしている。ここ数か月、彼はミランの将来の画策に余念がない。
 
 新しいビジネスパートナーとして浮かび上がっているのは2人で、ひとりは各国の起業家と繋がりを持つタイ人ブローカー、ビー・テチャウボン氏。彼のバックには、アブダビと上海の銀行がついている。
 
 もうひとつの候補は、中国系のコンソーシアム。香港のリチャード・リー氏、ワハハグループの宗慶後氏、そしてワンダグループの王健林氏が手を組み、前述の「ミスター・ビー」に対抗しようとしている。巨大な資本を持つ彼らの背後には、中国政府の思惑も介在すると言われている。

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