Jクラブはいかにして日本人守護神を育てるべきか? 元アーセナルGKコーチ、ジェリー・ペイトンの答えは…

2021年04月21日 加部 究

【短期集中連載】第3回|元アーセナルGKコーチで、Jクラブも指導したジェリー・ペイトン氏に聞く日本のGK事情

アーセナルGKコーチ時代のペイトン氏(左)。ペトル・チェフ(中央)、エミリアーノ・マルティネス(右)らをピッチに送り出していた。(C) Getty Images

 ジェリー・ペイトンは、1977年から15年間に渡りアイルランド代表として活躍した。この間プレーしたのは33試合。キャリアに比べて少ないのは、4歳年下に同国では伝説的な存在のパット・ボナーがいたからだった。

「ジャッキー・チャールトンが代表監督に就任した時に直接話したんだ。ジャッキーははっきりと言った。"私にとって№1はボナー。キミには№2になって欲しい"とね。私はボナーにポジショニングなども含めて全ての経験を伝え支援した。結局ジャッキーの下でボナーとも9年間一緒に仕事をしてきたわけだが、お互い尊敬し合える特別な関係だった。だからこそアイルランド代表が素晴らしい時期を送れたんだ」

 1956年に英国バーミンガムで生まれたペイトンは、ボールを蹴り始めた時からGKだった。成人して188㎝の長身。自身にとっては「とても自然な選択だった」と述懐する。
「私は身体が大きく強かったし、大きな手も持っていた。最初からGKとしてプレーするのが好きだったね。やがて地域選抜に入り、14歳から17歳までアストン・ビラで過ごし、19歳でバーンリーとプロ契約を交わした」

 イングランドリーグ(当時)では、38歳で引退するまで計10チームで600試合近いキャリアを積み重ねた。

「GKにはすごく多くの役割があり技術も求められる。例えば、ボールをキャッチした瞬間に、すぐに正しい選手に渡してリスタートをしなければいけない。スローなのか、サイドボレーなのか、ロングキックなのか。それも瞬時に判断しなければならない。シュートを止め、クロスをキャッチし、フィードをする。PKになれば迅速に分析をして成功すればヒーローになれる。私はGKとしてプレーしている時にアドレナリンが出てくる感覚が大好きだった」

 最後の砦として大きな責任を負う。だからこそ「ヒーローにも悪役にもなる」わけで、そんなポジションを愛してやまない。

「GKはスペシャリストにならなければいけない。今では進化して様々な能力が求められる。足下の技術、爆発的なパワー、長短の視野を確保しゲームを読む力も要る。つまり最高のアスリート能力と明晰な頭脳が必要で、責任も大きい。でもだからこそ89分間何もしなくても、重要な局面の重要なセーブで一躍ヒーローになれる。キーパーのパフォーマンスは芸術なんだ。私にとっては、ピッチ上で最高のポジションだよ」
 

次ページ外国人GKとレギュラーを競い合うのと、無条件でゴールマウスに立つのでは、どちらが成長できるのか?

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