日本が優秀なGKを育てるためには何が必要なのか?「ファン・デル・サルは12歳、レーマンも11歳までは…」

2021年04月20日 加部 究

【短期集中連載】第2回|元アーセナルGKコーチで、Jクラブも指導したジェリー・ペイトン氏に聞く日本のGK事情

ヴェンゲル政権時代のアーセナルで15年間にわたりGKコーチを務めたペイトン氏(左)。現在は日本でGK育成に熱意を注ぐ。(C) Getty Images

 ジェリー・ペイトンは、2003年から15年間に渡りアーセン・ベンゲルが率いるアーセナルでゴールキーパーを指導し、03-04年シーズンのプレミアリーグ初めての無敗優勝やFAカップ4度制覇、さらには欧州チャンピオンズ・リーグ決勝進出などの快挙を支えた。

 そんなペイトンが、日本のGKの育成環境を見て是非改善するべきだと感じるポイントがいくつかある。

 まず多くのアカデミーが人工芝のピッチを導入し、一方で依然として土のグラウンドでプレーする子どもたちが多いという現実だ。

「GKにとって大切なのは100%正しい技術を身につけることだ。プレミアリーグのアカデミーは全て天然芝でトレーニングをしているし、それがGKを育成するにはベストの環境だと言える。人工芝ではセーブして着地すると、身体の大きさに関わらず誰もがコンクリートに叩きつけられるように大きな衝撃を受ける。また日本の土のグラウンドには小石も混じっている。セーブする度に肩、腕、尻に痛みを覚え、繰り返せば無意識のうちにそれを避けるようになる。これでは正しい技術を習得することはできない」

 日本の現場で時折目にするのが、プールに飛び込むような恰好でダイブするGKだという。
「身体はボールに正対しているべきなのに、横を向いてダイブしてしまっている。正面を向いていれば、脇の力で腕の位置も修正できてキャッチが可能になる。そしてキャッチング能力が高まれば、チームが勝利する確率も高まる。多くの人たちは、ダイブしてセーブすればOKだと思っているかもしれないが、それでは相手のCKになる。逆にそういう場面でキャッチができれば、シーズンを通して考えれば物凄く大きな違いが出てくる。こうして些細なことを修正するだけでも、GKも育成は大きく変わってくる」

 ペイトンは兵庫県の淡路島を活動拠点とする相生学院高校(通信制)サッカー部のアドバイザーを務めているが、同校は2002年日韓ワールドカップの際にイングランドが合宿をしたピッチ等を利用可能で、天然芝や近くの砂浜でのトレーニング環境が整っている。
 

次ページ将来あるGKたちに必要なフィールドプレーヤー経験と個々の成長に焦点を当てた育成

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