【浦和】悲劇の死を遂げた元チームメイトに捧げる、ズラタンの決勝ゴール

2015年05月02日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

「不運にも亡くなってしまった元同僚のために」。G大阪との大一番、84分に決めた!

先頃、試合中に突然倒れそのまま帰らぬ人となったグレゴリー・メルテンスは、ズラタンの元同僚だった。ゴールはその彼に捧げるものでもあった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 首位・浦和と2位・G大阪の大一番、決勝ゴールを叩き込んだのは今季大宮から加入したFWズラタンだった。

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 84分、G大阪のミスを突いた李がボールを持って、左サイドの武藤に展開。武藤から左サイドを駆け上がった宇賀神にパスをつなぐ。そして宇賀神の左足から放たれた鋭いクロスに対し、ニアサイドで阿部が潰れ役となり、ファーサイドにいたズラタンがしっかり右足で合わせて叩き込む。彼にとって待望の浦和でのリーグ戦ホーム初ゴールが、この大事な場面で飛び出したのだ。
 
 ズラタンはこの得点の価値について、次のように語っていた。
 
「僕は特別なことはしていない。正しいポジションに入り、正しくシュートを決めただけさ。ただ、そのゴールが決まるまでの過程が素晴らしかった。李から武藤にボールが出た時には、ウガ(宇賀神)は自動的に縦に走り出してスペースを突いていた。そこでパスを受けたウガが、精度の高いクロスを送ってくれた。あとは合わせるだけだったからね。しかもゴール前にはレッズの選手が5人ぐらい詰めていた。その積極性を含めて、本当に素晴らしかったと思う」
 
 また、浦和のユニホームを着てリーグ戦埼スタ初ゴールがこの一戦で決まったことにも、「正しいタイミングだったよ」と微笑んだ。
 
「なにより、この恵まれた幸せな環境(今季J1最多5万3148人が来場)で勝点3を手にできた。特別な大きな勝利。そこに貢献できて嬉しい」
 
 背番号21はそのように得点が決まった道程であり、そして勝利を手にしたことを喜んでいた。
 
 加えて彼自身、特別な想いを抱いて、試合に臨んでいた。ベルギーのゲント時代(07年から12年まで在籍)のチームメイトだった元U-21ベルギー代表DFのグレゴリー・メルテンス(ゲントには10-11シーズンに在籍。今季はロケレンに所属)が4月27日にリザーブリーグの試合中に倒れて心肺停止状態となり、その後、病院で亡くなるという悲報が彼のもとに届いた。将来を嘱望視されていた24歳の若きタレントで、その突然の別れは、ともに汗を流した仲間のひとりとして、受け入れ難いものであった。
 
 ズラタンはメルテンスについて触れた時だけ神妙な面持ちになり、天へ捧げるように言った。
 
「(来日した)家族の前でゴールを決められたことは嬉しく思う。でも……先日、ベルギーでの元チームメイトが試合中の事故で不幸にも亡くなってしまい、僕もとても悲しい想いを抱いていた。だから、今日は彼に捧げる、彼のためのゴールだった。これからはゆっくりと、安らかに、眠ってほしい」

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