【連載】識者同士のプレミア放談「サンの見出しは“ゴミのような凡戦”だったけど――」

2015年05月01日 田邊雅之

あんなにチャンスを作ったのに勝ち損ねたという報道は少なかった。

スコアレスドローに終わった首位アーセナルと2位チェルシーの直接対決を、2人の識者はどう見たのか。 (C) Getty Images

田邊雅之:アーセナルとチェルシーの直接対決、0-0の引き分けでした。ただ、現地のメディアの報道は概ね好意的だった。
 
山中忍:ええ。0-0でも、守備的なサッカー云々という批判はほとんどなくて。唯一、辛辣な見出しを付けていたのは『サン』ぐらい。ゲームレポートに「クラッシュ・オブ・ザ・タイタンズ(巨人同士による壮絶な激闘)」じゃなくて、「トラッシュ・オブ・ザ・タイタンズ(巨人同士が繰り広げた、ゴミのような凡戦)」という見出しを打っていた。青と赤のロンドンダービー、しかも1位と2位の直接対決なのにあまりにもつまらないと。
 
田邊:スティーブン・ハワードが書いたレポートですよね?
 
山中:そう。あの人はサンのスポーツ部門の中でも立場が上の人だし、アーセナルにもチェルシーにも、とくに肩入れしたりしないんでしょう。
 
田邊:ロブ(ビーズリー)とはかなり違う(笑)。
 
山中:たしかに。ロブが担当だったら、仮に上の人間が同じ見出しを付けても、試合が終わった後にJT(テリー)が飛び上がって喜んでいる写真を、特大サイズで使っていたんじゃないですか(笑)。
[著者注/ビーズリーはサンの記者で、生粋のチェルシーファン。イングランド人記者の中で、モウリーニョと最も懇意なことで知られる]
 
田邊:チェルシーはレスターにも勝ったし(3-1。アーセナル戦3日後の27節延期分)、来週は否が応でも話題にしなきゃならないから、とりあえずアーセナルの話を進めたいんですが……。
 
山中:なんならこのまま、アザールのドリブルなみにチェルシー・トークで突っ走ってもいいですよ。原稿は400字で80枚くらいになるかもしれませんけど。
 
田邊:いや、それだと「サッカーダイジェスト・ウェブ」じゃなくて、「ワンダフル・ワールド・オブ・チェルシー・ウェブ」になってしまうので、ちょっと我慢してもらうとして。アーセナルサイドの報道の印象はどうですか?
 
山中:わかりました。ここは田邊さんの顔を立てて我慢します(笑)。
 
 全体的に言うと、チェルシーにとっては勝ちに等しい引き分けで、アーセナルは悔いの残る0-0というように捉える雰囲気も、まったくないわけではなかった。
 
田邊:ボール支配率だけ見れば60%対40%くらいですからね。あくまでも試合の内容を別にして、支配率だけについて言えばですが。
 
山中:実際問題、本当の意味でチェルシーの守備を崩したのは、後半のロスタイムに、ウェルベックがゴール前のボールに合わせようとした場面くらいじゃないですか? だからアーセナルはあんなにチャンスを作ったのに、勝ち損ねたといったような報道は少なかったのが実情ですね。

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