【連載】識者同士のリーガ放談「あえて守備から読み解くリーガ・エスパニョーラ」

2015年05月01日 豊福晋

リーガと言えば攻撃が話題の中心になりがちだが。

今回のテーマは「守備」。リーガといえば攻撃に目が行きがちだが、それに対抗するディフェンスにフォーカスした。 (C) Getty Images

豊福晋:今回は「守備」をクローズアップしていこうと思います。 
 
ルイス・フェルナンド・ロホ:珍しいね。リーガはどちらかというと攻撃が話題の中心になるから、我々メディアも守備にはあまり注目しない。 
 
豊福:レアル・マドリーは前節、アルメリアに3-0で勝利し、今シーズンの総得点を「100」の大台に乗せました。リーガの34試合で102ゴールです。

 参考までに他の主要リーグを見てみると、プレミアは同じ34試合でマンチェスター・シティの70得点が最多、ブンデスはバイエルンの77得点(30節終了現在)、セリエAはユーベとラツィオの63得点(33節終了現在)です。 
 
ロホ:バルサも97得点をマークしているし、この2強の得点力はずば抜けている。3位がアトレティコで65得点。これくらいが普通なんだけど。 
 
豊福:というわけで、逆に守備はどうなっているのかと、そういうわけです。 
 
ロホ:下位チームは戦力的にどうしても限界がある。それが世界有数のアタッカーを揃えるバルサ、マドリーと対戦するわけだから、失点がかさむのはある意味、仕方がない。中位以下のクラブの守備陣は、やはり大変だ。 
 
豊福:前節もヘタフェがバルサに6ゴールを食らいました。ヘタフェはしっかり引いて守っていたんです。綺麗な4-4-2で、中盤4人と4バックのコンパクトな2ラインができていた。だから、バルサといえども簡単にはこじ開けられないだろうと思ったんですが……。やはりどれだけ引いても、あのクラスの攻撃を前に90分は持たない。 
 
ロホ:そうかと思えば、下位でも2強相手に積極的に向かってくるチームがある。ラージョ(バジェカーノ)なんかはその典型例。パコ・ヘメス監督はどんな相手にも攻め挑んでくる。 
 
豊福:だから失点も多いんですけどね。ラージョはグラナダと並んで、ここまで最多失点(61)です。パコ・ヘメスの思想は魅力的なんですがね。 
 
 リーガでもっとも優れた守備を持っているのは、どのチームでしょうか? 
 
ロホ:これは間違いない。最強の守備組織を持っているはアトレティコだ。個々の守備能力の高さではなく、組織として全体で守ることができている。あのバランスとオートマティズムは圧巻だ。 
 
豊福:数字を見れば、アトレティコの26失点は3番目です。最少がバルサで19失点、次がバレンシアで25失点。ただ、こうした数字には表われない堅さがありますよね。 
 
ロホ:アトレティコは、ファンフラン、ミランダ、ゴディン、シケイラあるいはガメスという最終ラインだけで守っているわけじゃない。その前のメディオセントロ(セントラルMF)、さらにサイドハーフのアルダとコケも前線から守備をして、かつ自陣にまで戻る。選手一人ひとりに強い決意と責任感が感じられる。 
 
豊福:あえて名前を挙げるとすれば、その完成度の高い守備を成立させているキーマンは誰でしょう? 
 
ロホ:シメオネ以外にはいないね。あそこまでチームに守備意識を徹底させ、実践させられる監督を、私は他に知らない。アトレティコの堅守は、シメオネの存在があってこそだ。 
 
 そしてあの空中戦の強さ。この長所は、セットプレーで攻撃にも活かされている。 

次ページオタメンディは能力的にマテューを大きく上回る。

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