中が閉じれば再びサイドに。“横のストレッチ”でモンゴル守備網を攻略し、大量得点の口火を切る

2021年03月31日 河治良幸

コンパクトである代わりに、外側と裏にはそれなりにスペースがあった

右サイドの伊東(写真)や松原、左の小川を起点にチャンスを作りつつ、中と外を上手く使いながらモンゴルの守備網を攻略した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 最終的に14−0という記録的な結果になったモンゴル戦だが、これまで日本代表が戦ってきたなかで、決して最弱レベルではない相手に、どうしてここまで得点を積み重ねることができたのか。

 戦い方のベースは3−0で勝利した韓国戦から大きく変えたわけではない。佐々木翔の負傷が伝えられた左サイドバックが小川諒也に、韓国戦で先制ゴールを挙げた山根視来に代わり、松原健が先発で代表デビューとなったが、センターラインと左右サイドハーフは同じメンバー、基本的なメカニズムにも目立った変更はなかった。

 違っていたのはやはり、韓国戦よりも相手陣内でプレーする時間が長く、モンゴルのボールになっても相手のミスやロングボールのセカンドからマイボールにできるため、ほぼハーフコートゲームになったことだ。

 モンゴルは4-1-4-1という基本布陣ながら、自陣で守備を固めるときは5-4-1になる。それでもラインを頑張って上げようとしていたため、コンパクトである代わりに、外側と裏にはそれなりにスペースがあった。

 日本はポゼッション時には1トップの大迫勇也、変則型の2シャドーである鎌田大地と南野拓実、さらに遠藤航と守田英正の2ボランチも厳しくマークされたが、右前に張る伊東純也よりインサイドにポジションを取る松原健がフリー、さらに左サイドの広い位置を小川諒也がほぼ自由に使える状況だった。

 そのため日本は右の松原と伊東、左の小川を有効に使うことから始めて、両サイドを起点に何度かチャンスを作り、モンゴルのディフェンスが外に引き付けられたところで、今度は大迫のポストから鎌田、南野が仕掛ける形を作りやすくなる。そこから中央を締めてくれば再びサイドという横のストレッチを繰り返した。

 モンゴルのボールになっても、すぐに前からのプレッシャーでミスを誘うかロングボールを蹴らせて即時回収できるシーンが多く、序盤からいつ点が入ってもおかしくない展開だった。それでも、なかなか先制点が入らないと焦れてくるし、モンゴル側も守り慣れてくる。そうなるより早く先制点が入ったことが、大量得点の流れにつながったことは間違いない。
 
 先制点の直前には、中央でクサビを受けた鎌田から左に展開し、小川がクロスに持ち込むシーンがあった。これは相手のブロックに当たってしまったが、5バックから日本の攻勢に応じて6バックにもなるモンゴルに対して、このチャンスメイクが伏線になった。

 13分、左の小川が抉ってクロスを入れると、中央の味方に合わず右アウトの松原のところまでボールが達する。ここで松原は落ち着いて中に折り返すと、ボールを受けた南野が左足でシュート。グラウンダーの弾道は見事にディフェンスの間隙を突いてネットを揺らした。
 

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