ベストゲームの中に見えた課題…アルゼンチンが示した日本が未だ到達できていない領域とは?

2021年03月30日 飯尾篤史

第1戦、失点後に久保も感じたアルゼンチンの変化

アルゼンチンの中盤を担ったマティアス・バルガス。第2戦では精彩を欠いたが、球際での強さは光っていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3-0と完勝したアルゼンチンとの第2戦は、17年12月に立ち上げられた東京五輪代表にとってベストゲームと言っていい。

「特に前半、我々はなかなかボールを持てず、日本に支配された。そして前半の終わりにゴールを奪われたことで、選手たちの集中が少し削がれてしまったようだ。後半はボールを持つ時間が増えたが、残念ながらセットプレーから2失点を喫してしまった」

 敵将のフェルナンド・バティスタ監督も敗戦を素直に受け入れるしかなかった。

 ただし、アルゼンチンの選手たちが南米や欧州から長距離移動したうえに東京から北九州へ移動し、中2日で試合を行なったことも考慮しなければならない。

 より本来の姿に近いのは、東京で戦った第1戦のアルゼンチンだろう。
「本当にしたたかで、サッカーをよく知っているチームだった」と横内昭展監督が試合後に振り返ったように、彼らが初戦で見せた老獪さ、狡猾さ、したたかさは、日本が見習わなければならないものだ。

 3月26日に東京スタジアムで行なわれた第1戦。立ち上がりから互いに激しいデュエルの応酬で、主導権争いが続いた。アルゼンチンのプレスや囲い込みは強烈だったが、日本が大きく引けを取ったわけでもなかった。

 すると、アルゼンチンは中盤の密集を飛び越えるように、日本のディフェンスラインの裏にロングボールを送り込み、それが21分のFWガイチの先制点に繋がった。

 興味深かったのは、その後のアルゼンチンの振る舞いだ。
「前半、自分たちの流れの時に、ポッと失点してしまった。そこから相手も戦い方を変えてきて、自分たちがボールを持つけど攻められない時間が続いた」

 久保建英がこう振り返ったように、アルゼンチンは自陣に引いてタイトな守備ブロックを組み、日本を誘い込むような戦い方に変えたのだ。そして、奪ったボールを長身FWガイチに送り込み、セカンドボールの回収に精力を注いだ。再び久保の言葉に耳を傾けてみる。

「相手が引いて守ってきて、気持ち良く守らせてしまった時間帯もあった」
「相手の嫌なところにポジションを取ったつもりですけど、相手も消してきた。中のスペースはほぼなかったと思います、特に前半は」

 戦況に応じて相手の嫌がる戦い方をする――。こうした臨機応変なスタイルこそ、日本がアルゼンチンから最も学ぶべきものだ。
 

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