金田喜稔が斬る!「アルゼンチンとの再戦で奪った先制弾は、日本サッカーの歴史において革新的なゴールだ」

2021年03月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

「オリンピックで金メダル」その本気度がうかがえるゲームだった

球際でも激しくバトル。ハードワークの質や集中力のレベルで、日本がアルゼンチンを上回った。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3-0で完勝した日韓戦でも感動したけど、今回のU-24の戦いぶりにも胸を打たれた。観ている人たちにも、相当なインパクトを与えたんじゃないかな。

 南米予選を1位で突破したアルゼンチンを相手に、3日前の第1戦目は0-1で完敗だった。相手の洗練された守備や巧みなゲームコントールなど、世界基準を痛感した試合だった。でも、中2日で迎えた再戦では3-0で勝利を収めた。アルゼンチンの局面の激しさは相変わらずだったけど、日本はそれを上回るものを見せつけたと思う。

 15分から20分までは、どちらが主導権を握るか、お互いが一歩も引かずにやり合っていた。相手のボールホルダーに対して、激しく寄せて、奪い合って、こぼれ球を拾って。それがずっと繰り返されるなかで、絶対に相手にペースを握らせるものかという日本の選手たちの頑張りは素晴らしかった。そして、流れを引き寄せたのは彼らのハードワークだった。ハードワークの質や集中力のレベルで、日本が上回り、試合を支配した。これは本当に凄いこと。さすがにワシもびっくりしたよ(笑)。マジで楽しかったなぁ。

 選手たちも「オリンピックで金メダル」と言っているけど、ただ言葉にしているだけじゃない。みんな本気なんだ、と。その本気度がうかがえるゲームだった。

 もっとも、いくら気持ちの面で本気を出しても、技術、戦術、フィジカルで勝てないものは勝てない。だけど、そういった部分で日本は確実にレベルアップしている。それを証明してみせたし、選手たちも自信になったはずだよ。

 東京五輪の登録メンバーは18人。オーバーエイジの3人が加われば、U-24世代の選手たちに残された椅子はたったの15。その厳しさを選手たちは十分に理解していることも伝わってきた。一人ひとりのコメントを聞いていても、それはよく分かる。熾烈なポジション争いを覚悟していることは、選手たちのプレーを見れば一目瞭然だ。
 
 そのひとりが、第1戦はサスペンションで出られず、この再戦で先発した田中だろうね。前半に先制を許したアルゼンチンは、後半の頭から第1戦で活躍したバルガスを投入してきた。それでも、敵の10番はゲームを動かすような働きは見せられなかった。じゃあ、誰がこの試合を動かしていたか。ワシは田中だったと思う。

 相手からプレッシャーをかけられても、同じように相手にプレッシャーをかけ続ける。バチバチとやり合うなかで、慌てることなく、正確にボールをコントロールして、精度の高いパスで展開する。戦えるし、ボールを前にも運ぶ。両チームを通じて、その存在感は群を抜いていたよ。

 1試合しかチャンスが与えられていない自分の立場をわきまえて、結果を出さなければいけないという強い気持ちで試合に臨んだはず。そして、その想いを結果と内容で示した。凄かった。その一言。逞しさを感じたよ。
 

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