【アルゼンチン戦|戦評】ひとり入るだけでここまで変わるのか。“17番”がもたらした「劇的な効果」

2021年03月30日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

初戦からスタメン9人を入れ替えて臨む

アルゼンチン撃破の原動力となったのが田中碧(左)と板倉(右)のダブルボランチだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3日前に行なわれた第1戦では、敵の主砲アドルフォ・ガイチの一発に泣いて0-1で敗北。シュート数では10対4と上回り、善戦と言えなくもないが、試合巧者の南米王者にしてやられた印象だった。

 東京から北九州に舞台を移しての第2戦は、五輪本番を想定すると、連敗すればグループステージ敗退がほぼ決まってしまう、いわば後がない状態だった。それでも、敗戦を引きずることはなく、試合序盤から選手から伝わってきたのは「同じ相手にホームで二度も負けるわけにはいかない」(久保建英)という気迫。それが3-0という望外の快勝に繋がったのは間違いない。

 横内昭展監督は、打撲で出場が危ぶまれたその久保と板倉滉以外、スタメンを9人入れ替えた。驚きだったのが、初戦で配給面での課題を残したダブルボランチの構成だ。その試合は出場停止だった田中碧の先発は確実視されていたが、その相棒に3日前はCBで出場した板倉を指名したのだ。

 田中駿汰が故障で離脱し、その代わりに初戦で起用された渡辺皓太が結果を残せなかったうえ、この日はキャプテンの中山雄太がコンディション不良で出場を回避。いわば苦肉の策で腕章とともにボランチの一角を託された板倉が特大のパフォーマンスを発揮するのだから、サッカーはわからない。

【動画】衝撃のリベンジ!日本が南米王者アルゼンチンを3発粉砕!
 それにしても、その板倉と田中碧のコンビは際立っていた。五輪代表の中盤で組むのは初めてだったが、川崎フロンターレの先輩・後輩関係にある2人は抜群の連係を披露。気の利いた潰しでアルゼンチンの攻撃を分断すれば、スムーズに2列目の3人にボールを配給してアタックの起点となった。

 とりわけ、初戦を欠場した田中碧のプレーは出色だった。「行くところと行かないところをはっきりさせた」と本人が語ったように、当たり負けしないフィジカルで的確にボールを回収。長短のパスを駆使して、相馬や久保が敵と1対1になる場面を作り出した。さらに、声を張り上げて周囲に指示を飛ばすなど、中盤に文字通り君臨。王者・川崎の心臓が、チームを生き返らせたと言っても過言ではない。

 中盤の底が安定したことで、初戦では徹底マークに苦しんだ久保が、いい形でボールを受けられるようになり、ドリブルや局面を変えるパスで随所に持ち味を発揮。三笘薫に代って左サイドハーフで起用され、対峙したマーカーを翻弄した相馬勇紀とのコンビネーションも光った。

【PHOTO】日本3-0アルゼンチン|林が先制弾、板倉2発!南米王者に3発快勝でリベンジ
 

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