【バイタルエリアの仕事人】vol.3 柿谷曜一朗|日本屈指のテクニシャンが明かす“仕事ができる選手”の共通点とは?

2021年03月29日 手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)

「僕がプロに入ったときも、とてつもないボールがたくさん来た」

クラブ史上最年少の16歳でC大阪のトップチームへ昇格した柿谷。当時の知られざる秘話を明かした。(C)SOCCER DIGEST/(C)Getty Images

 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る新連載のインタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第3回は日本屈指のテクニシャン、名古屋グランパスの柿谷曜一朗だ。後編では、過去の秘話も交えながら、バイタルエリアでの考え方や重要なスキルについて語っている。

 今季は新天地・名古屋でプロ16年目のシーズンを迎えた柿谷。セレッソ大阪の育成組織からクラブ史上最年少の16歳でトップチームへ昇格し、若き頃から天才と呼ばれ続ける男の思考を深掘りしていく。

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 これは、僕が16歳でセレッソに入った時に、いま鹿児島ユナイテッドFCでプレーしている右サイドバックの酒本(憲幸)選手に聞いた話です。酒本選手が若い頃の話ですが、FWの西澤明訓さんに対してパスを出す時は、いつも全力で蹴っていたらしいんです。「良いボールはいらん」とか「シュートでもなんでもいいからとりあえず俺のところまで届かせろ」と言われていたらしくて……(笑)。
 
 僕がプロに入った時も、(酒本選手から)とてつもないボールがたくさん来たんですよ。「そんなパス受けれるか!」っていう。でもよく考えたら、それをしっかり受けて前を向けたらチャンスになるという考えになったし、これは言い訳にはできないと思った。

 それこそ日本を代表する選手の乾(貴士)くんや(香川)真司くんは、そういうパスを平気で受けて、あんなに身体が小さいのに簡単に前を向く。バイタルエリアで仕事ができる選手っていうのは、「こんなボールを頂戴」ではなく、「とにかくまずボールをくれ」って言うんです。

 そんな選手を見てきたから、僕自身もパスを出す時、「じゃあお前これでできんのか?」っていうシュートみたいな無茶なパスを、自分が欲しい分、相手にも出すようになっていきました。

 いまの名古屋で言うと、児玉(駿斗)とかは、そういったプレーをすごく期待できるような選手じゃないかなと思いますね。バイタルでの仕事だったり、彼は彼にしかできない周りを魅了するようなプレーができるので、みんなが「オラッ」っていう感じでボールをぶつけてあげれば、すごく良いプレーヤーになっていくんじゃないかなと思います。
 

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