プレミア得点王なるか!? 21歳の新進気鋭ハリー・ケインを徹底解剖

2015年04月29日 ロベルト・ロッシ

現代的で頭の良いストライカー。

戦術眼に優れ、フィジカル能力、テクニックも申し分なし。ケインは現代的で頭の良いストライカーだ。 (C) Getty Images

 今シーズンここまで20ゴールを挙げ、セルヒオ・アグエロ(21ゴール)、ジエゴ・コスタ(19ゴール)という当代きってのストライカーとプレミアリーグの得点王を争っているのが、トッテナムで大ブレイク中のヤングスター、ハリー・ケインだ。
 
 カップ戦を含めた全公式戦のゴールを「30」の大台に乗せたケインは、なにが優れているのか? どれほどのポテンシャルを秘めているのか? 現役のプロ監督が、気鋭のストライカーを解剖する。
 
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 1993年7月28日生まれの現在21歳。昨シーズンまでトップリーグでの実績はほぼゼロに等しく、今シーズンもトッテナムではアデバヨール、ソルダードに続くCF3番手の位置付けでスタートした。
 
 ところが、チームが不振に陥るなかで先発に抜擢されると大ブレイクを遂げ、驚異的なペースでゴールを積み重ねている。3月下旬にはイングランド代表にも初招集された(3月27日にリトアニア戦でデビューし1得点)。
 
 188センチという大柄な体格ながら、プレースタイル的には最前線中央でDFを背負ってボールをプロテクトし、基準点になる古典的なCFではない。積極的に組み立てにも参加し、前線を動いてスペースを作り出したり、2ライン(DFとMF)間で前を向いて仕掛けたりと、テクニックとダイナミズムを兼備した現代的なCFだ。
 
 フィジカル的に見ると、長身の割にコーディネーションが良く、身のこなしは柔らかくエレガント。爆発的なパワーを持ち合わせているわけではないが、スピード、クイックネス、アジリティのどれを取っても水準以上のレベルにある。
 
 テクニックは非凡だ。パスは正確なだけでなくタイミングの感覚が良く、組み立てに加わっても効果的に機能する。シュートはとりわけパワフルではないが十分な精度があり、高い確率で枠を捉える。1対1の突破は強みではないものの、優れたコーディネーションと安定したテクニックを活かして目の前の相手を巧みにかわしていく。
 
 タクティカルな観点で言えば、プレーの流れとタイミングを的確に読んで動ける、卓越した戦術感覚が魅力。オフ・ザ・ボールでは裏のスペースへの飛び出し、2ライン間に引く動きがともに巧妙で、カウンターでオープンスペースに走り込む時のライン取り、エリア内でマークを外す動きとそのタイミングにも秀でている。
 
 一言で言えば「頭の良いストライカー」だ。
 
 メンタル面は限られた材料から判断するしかないが、常に冷静でナーバスなところがなく、試合から消えている時間も実に短い。積極的にプレーに関わろうとする姿勢が終始見られるなど、ポジティブな印象を与える。
 
 トッテナムよりもうワンランク上のクラブに移籍しても、そのインパクトを吸収・消化できるだけのキャパシティを備えているように見える。
 
 総合的に判断すると、それ自体で違いを作り出す傑出した長所を持っているわけではないが、大きな欠点がなく、あらゆる要素をバランス良く備えている。これが最大の持ち味だ。現時点で絶対的なレベルでは明らかに及ばないものの、タイプとしてはかつての名ストライカー、マルコ・ファン・バステンを思い起こさせる。
 

次ページ今後の成長の鍵を握るのは――。

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