“日本人初”を達成した堂安律&奥川雅也に高まる期待。侍コンビがビーレフェルト残留のカギを握る【現地発】

2021年03月24日 中野吉之伴

ブンデスリーガの歴史において“日本人初”の記録を樹立

奥川(左)と堂安(右)はビーレフェルトを残留に導くことができるか。(C)Getty Images

 代表ウィークに入る一週間前に行なわれたブンデスリーガ第25節、昇格クラブのビーレフェルトが強豪レバークーゼンを相手に2-1で勝利し、順位を残留圏の15位へと順位を上げた。値千金のゴールを決めたのは、堂安律と奥川雅也の両日本人選手だった。

 ブンデスリーガの歴史において、同じチームでプレーするふたりの日本人選手が同じ試合でゴールを挙げたのは、16年4月インゴルシュタット戦まで遡る。当時ハノーファーに所属していた清武弘嗣と酒井宏樹が決めて以来のこと。この試合は2-2の引き分けに終わったため、チームを勝利に導いたという点では、史上初のことだ。

 フランク・クラマー新監督就任後、チームはこれまで以上に自分達から積極的にボールを奪いに行き、ボールを持っても敵陣でボールを動かす時間が増えてきている。象徴的なのは、ウーベ・ノイハウス前監督の下では出場機会に恵まれなかったドイツU-21代表アルネ・マイアーだろう。ボランチやインサイドハーフで攻守に重要な働きを見せ、25節では専門誌『kicker』のベストイレブンにも選出されている。

 監督交代はポジティブな影響をもたらしているが、チームが今シーズンを通して成長している点は見逃せない。ほとんどの選手が1部リーグ初参戦なのだ。シーズン序盤は2部リーグでやってきたことをベースに取り組んだが、1部のレベルにすぐ順応することは簡単ではない。
 
 そのため、ノイハウス前監督はまずは守備への意識を高め、崩されにくい戦い方へ方針を変えた。そうした取り組みの中で1部のサッカーに慣れながら勝点を粘り強く積み重ねてきた時期があったからこそ、クラマー監督の戦い方がうまく機能しているのではないだろうか。

 そして、こうなったビーレフェルトで堂安と奥川の両日本人選手がこれまで以上に重要な存在になってきている。レバークーゼン戦では堂安がまず17分に素晴らしい先制ゴールを挙げ、試合の流れを引き寄せた。クロスに飛び込むタイミング、相手DFの前に飛び出してくるスピード、ボールへのアプローチの仕方とすべてがパーフェクト。活躍はこのシーンだけではなかった。

 これまでは右サイドでプレーしていた堂安は、この試合でキャプテンのファビアン・クロスと2トップ気味のトップ下で起用された。前線でうまく相手DF間のスペースに顔を出し、左右のスペースにうまく流れては縦パスを引き出す。

 難しいロングパスで相手が後ろからプレッシャーをかける局面でも、相手を身体でしっかりとブロック。巧みにボールをコントロールして、味方が押し上げてくる時間を作り出すプレーは、チームにとって本当に大きな助けとなっていた。ゴール前では、こぼれ球を躊躇なく左足シュートに持ち込み、あわやというシーンに次々と絡んでいた。

次ページドイツ語で勝利インタビューに対応した奥川は「ビールを飲みますか?」と尋ねられると…

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