「選手獲得の際に重視しているポイントは?」欧州クラブのスポーツディレクターの裏事情に迫る(後編)――【STVVの野望】

2021年03月28日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

マース監督招聘の理由は?

これまでの人生で様々な人と接してきたピントSD。その経験が多国籍の選手とのコミュニケーションに大いに役立っているという。©STVV

 17年11月に『DMMグループ』が経営権を取得し、現在では5人の日本人選手と多くの日本人スタッフが在籍するベルギー1部のシント=トロイデン(STVV)。

 そんな注目クラブのスタッフに話を聞き、欧州サッカークラブの"リアル"に迫るのが『ワールドサッカーダイジェスト』誌で好評連載中の「STVVの野望」だ。第4回目は、前回に続きスポーツディレクター(SD)のアンドレ・ピント氏に移籍市場やコミュニケーション術などについて語ってもらった。

――今冬の移籍市場では5人の選手を獲得するなど積極的な動きを見せましたが、どのような狙いがあったのでしょう?

 前半戦はチームが不調だったこともあって補強は必須でした。トップ下に迎えたクリスティアン・ブルース(←ウェステルロー=ベルギー2部)は、ピーター・マース監督の要望でリサーチを開始し、チームスタイルにハマると確信したので獲得した選手です。レギュラーだったポル・ガルシアが冬に移籍(→フアレス=メキシコ)したセンターバックは、後釜として同じ左利きのディミトリ・ラバレー(←マインツ=ドイツ)に白羽の矢を立てました。それぞれサイドバックとセンターフォワードに獲得した橋岡大樹(←浦和レッズ)とイロンべ・ムボヨ(←コルトリイク)は、以前から追いかけていた選手で、ようやくサインに漕ぎつけたという実感です。とくにムボヨの獲得は大成功。2トップを組む鈴木優磨もとてもやりやすいと言っています。

――選手を獲得するうえで重視しているポイントは?

 求めるスキルはポジションによって違いますが、異なる環境にすぐに馴染める順応性や、チームのスタイルに合わせられる賢さはポジションに関係なくとくに重要なファクターだと考えています。マース監督は攻守にアグレッシブなサッカーを志向しているので、"走れる"ことも必要不可欠です。シント=トロイデンは農家が多い田舎町です。もともと真面目な気質の市民が多いので、チームのために懸命に走る選手はファンからもとくに愛されていますね。

【動画】橋岡のベルギー・デビュー戦を内田篤人が解説
――今シーズンのクラブの戦いぶりは?

 スタートは良くなかったですね。一時は最下位まで落ちてサポーターも噴火寸前でした。その状況下でクラブとしては何を改善できるのか。導き出した答が昨年12月の監督交代でした(ケビン・マスカット→マース)。それが功を奏し、マース監督就任から最初の10試合は6勝1分け3敗の好成績で、順位も15位(18チーム中)まで浮上しました。今後はさらに順位を上げながら、来シーズンのベース作りも進めていきたいですね。

――マース監督を招聘した理由は?
 
 ベルギー人のマーク・ブライスが指揮していた18-19シーズンはチームが非常にうまくいっていました。その後は外国人監督で思うような結果が得られなかったこともあり、ベルギー人にこだわっていました。マースはロケレン時代(10~15年)に二度の国内カップ制覇を成し遂げた実績があり、ビッグクラブとの戦い方などどうしたら結果が出せるかを熟知しています。総合的に見ても最適な人選だったと思います。

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