【浦和】時に5トップに――。関根貴大の積極性とミシャ戦術が合致して生まれた理想的な一撃

2015年04月26日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

"スピードモンスター"永井を抑えて、得意のドリブルで敵陣をえぐる。ふたつの難題をこなす。

積極的な姿勢から先制点を叩き込んだ関根(中央)。チームを勢いに乗せる一撃だった。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 対峙する名古屋の"スピードモンスター"永井を抑えつつ、最大の武器であるドリブル突破で敵陣をえぐってゴールを狙う。
 
 下手をすればどっちつかずになってしまう難しいふたつのテーマを、右WBとしてリーグ戦4試合連続先発出場を果たした関根がこなし、しかも貴重な先制点を決めて勝利へ導いた。これで浦和は5勝2分0敗と、開幕から無敗のまま首位の座をキープした。

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 立ち上がりから主導権争いが続き、両チームともに決定的なシーンをなかなか作れずにいた。ただ基本的には守備を固めてカウンターを狙う名古屋に対し、浦和は関根と宇賀神の両WBが積極果敢にオーバーラップを繰り出して、ぶ厚い攻撃を展開。時に5バック、そして時に5トップになるというペトロヴィッチ監督の3-4-2-1システムの特長を活かし、じわじわと圧力をかけて名古屋を追い込んでいった。
 
 すると39分、右ストッパー森脇のクサビのパスを、ペナルティエリア内でズラタンがフリックで後方にずらす。「ちょうどウメちゃん(梅崎/右シャドーで先発)とポジションをチェンジしていた時だった」と言う関根が、一度ヘッドでズラタンに折り返す。
 
 そこに立ちはだかった闘莉王にボールを蹴り出されたが、そのクリアは小さく、関根の目の前にボールがこぼれる。今季、原口元気(ヘルタ)から受け継いだ背番号24はすぐさまこぼれ球を拾うと、躊躇うことなく中央へ切れ込み、左足を鋭く振り抜く。光線のような一直線の弾道が楢崎の股間を抜けてゴールネットを揺らし、浦和にとっての最初の決定機が、幸先良く先制点に結び付いた。
 
「たまたま僕のところにボールが転がってきて、たまたまGKの股を抜く(シュートを打つ)ことができた」
 
 そのように関根は今季初ゴールについて、「偶然」、「たまたま」と運に恵まれたと強調していた。ただ、WBがFWの位置まで攻めに出て、攻勢に立った時には5人、6人と一気に畳み掛ける――。この1点は、関根の積極性と浦和の戦術が高い次元で合致して生まれた、理想形だったと言って良いだろう。
 
 まさに攻め倒したと言えるそのゴール。そこに至るまでには、伏線があった。
 
 それは、ACL・水原三星戦を1-2で落としてグループステージ敗退が決定した後日、ショックを払拭するために組まれたミーティングでのことだった。ペトロヴィッチ監督は、選手たちにあるビデオを見せたのだ。

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