シュート練習で「外したら、終わり!」2戦合計“無得点”の相模原にゴールを呼び込む三浦流指導法

2021年03月12日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

『必ず入れろ!』『最後まで押し込め!』『ネットを揺らすまでやれ!』

バイタリティ溢れる指導を続ける三浦監督。次節の岡山戦で今季初勝利を掴めるか。写真:徳原隆元

 練習中にかける言葉ひとつとっても、魂をこめる。工夫を凝らす。

 ある日のシュート練習で、SC相模原の三浦文丈監督は何度も繰り返した。口酸っぱく、同じフレーズを口にする。

「入れろ! 入れろ!」

 枠を外すのはもちろん、まだボールはアウトになっていないがそのターンは終わり、といった雰囲気になっても叫ぶ。「入れろ!」と。

「あれはね、習慣づけないとダメなんだよ。たとえば、バーに当たったボールが転がってグダグダな感じになると、そこで止めちゃう選手もいる。でも、どれだけグダグダになっても、最後までネットを揺らすっていう作業をし続けていると、それが試合中でも必ずネットを揺らそうってなる。だから、どうなっても必ずやりきって、入れろ、と」

 その時はDFをつけないシュート練習だった。3人目の動き出しから打つ、サイドからのグラウンダーのクロスに合わせる。大枠の形は決まっているが、パスの角度や強弱など選手個々がアレンジを加える。流れのなかで、至近距離からシュートする場合も出てくる。GKとの距離はおよそ3メートル。決めて当たり前。そんな状況だ。

「これ、練習の意味あるの? という空気が一瞬、流れたりもするけど、俺はそういう時でも『入れろ!』と言う。それが習慣だから。『必ず入れろ!』『最後まで押し込め!』『ネットを揺らすまでやれ!』って」

 特筆すべきは、そのシュート練習の終わらせ方だった。普段なら「あと5本入れたら終わり!」と本数を決めるが、趣向を変えた。

 そろそろ終わらせようとした時、次にシュートを打つのは、その日はあまり上手くいっていない選手だった。三浦監督は「プレッシャーをかけてみるか」と考え、みんなを止めて"ルール"を伝えた。

「ゴールが続くかぎりは続けよう。外したら、そこで終わり!」

 結果、その選手はシュートを外してしまう。練習は終了。順番を待っていたユーリが「ノー! ノー! ノー!」と抗ってみせるが、三浦監督は「試合だったら、これで終わりなんだから」と意に介さない。

「試合の時のプレッシャーはもっとある。練習中の俺のプレッシャーでゴールできなかったら、試合でなんて決められない。そういう意味でプレッシャーをかけてみたんだけど」
 
 シュートを決められるか、決められないか。決定力の要因は「ほぼメンタルだと思う」と三浦監督は言う。

「プロなんだから、めちゃくちゃ下手な人はいない。フリーで蹴れば、だいたいは思ったように蹴れる。そこに影響してくるのが、相手DFやGKのプレッシャーだったり、残り数分で決めたら同点になるとか、そういうシチュエーションのプレッシャーもある」

 それに打ち勝てるメンタルがあるかどうか。いかにプレッシャーをはねのけてゴールを奪えるか。そこにフォーカスする。

 チームはここまで2試合を消化し、1分1敗の戦績。京都サンガF.C.との開幕戦は0-2の黒星、続くザスパクサツ群馬戦は0-0のスコアレスドロー。白星だけでなく、まだ1点も奪えていない。

 次節は3月14日の敵地でのファジアーノ岡山戦。三浦流の指導で日々鍛えられている選手たちは、待望の今季初ゴールと初勝利を手にできるか。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストweb編集部)

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