【名古屋】点を取りたければ、守れ――逆説的アプローチでさらなる高みへ

2021年03月07日 今井雄一朗

75分の決定機を境に、試合の流れは名古屋へ

札幌戦も堅守発揮で1-0の完封勝利。CBの中谷は「0-0で抑え続ければ何かが起こる。その状況を楽しめている自分がいる」と語る。写真:徳原隆元

[J1リーグ2節] 名古屋1-0札幌/3月6日(土)/豊田スタジアム

 虎の子の1点を守りきって、というよりは守りきるなかで虎の子の1点を手にした勝利だ。82分間を無失点かつ無得点で過ごした両チームを比べると、チャンスとシュートの数では札幌のほうがむしろ優勢にも思えた。

 勝敗を分けたのはスコア通りに決定力の差、そして勝つには1点で十分と自信を持てる守備力の差もまた大きい。中谷進之介は言う。「0-0で抑え続ければ何かが起こる。その状況を楽しめている自分がいる」。だからこそアタッカーたちは、たとえチャンスが少なくとも、高い集中力を発揮することもできる。

 正直なところ、名古屋の攻撃はさほど機能していなかった。スタメン出場した山﨑凌吾とガブリエル・シャビエルのコンビは、ボールは引き出すが周囲との距離感が悪く、前半は攻撃を大きく発展させられなかった。

 マッシモ・フィッカデンティ監督は後半も少しだけ様子を見ると、54分と早い時間帯にFW2枚とボランチをまとめて代える積極策に打って出る。

「フレッシュさをどうしても持ち込みたかった」というのは体力的な理由ではないだろう。停滞していた攻撃に、新鮮な風を吹き込み、チーム全体をも活性化したかった。効果はすぐには表われなかったが、スカウティング通りに札幌の動きが鈍りだすと、75分の前田直輝の決定機を境に、試合の流れは名古屋へと傾き出した。
 
 82分、膠着の展開に終止符を打ったのは、身体を絞り、貪欲さを増した五輪世代のアタッカーだ。3枚替えのひとりとして投入された相馬勇紀は、最初こそサイドに張って自らの突破力を反撃の力としようとしていたが、先の決定機と前後して右の仕掛けが増えると、思考をフィニッシャーモードに切り替え、その時を待った。

 82分の得点シーンはまさにストライカーの趣で、逆サイドからスルスルとペナルティエリアを斜めに渡り、宮原和也の突破、前田直輝の突破と連続する局面の中で「前田君にパスが入って抜く瞬間を狙って加速」。自陣の最奥に侵入された札幌DF陣の死角からのパスに足を出し、まんまとワンタッチゴールをせしめたのである。
 

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