【CLポイント解説】ユベントスが耐え抜いた「0-0」

2015年04月23日 片野道郎

攻勢に立つも枠内シュート1本に終わったモナコの限界。

1)退屈きわまりない試合。しかし重要なのは結果
 
 枠内シュートが両チームわずか1本ずつという数字が示す通り、見どころがほとんどない退屈な試合だった。しかしCLの準々決勝で重要なのは、内容よりも結果である。
 
 モナコは終始攻勢に立ちながら一度もブッフォンの守るゴールを脅かすことができず、ユベントスは今シーズン最も見るに耐えない試合をしたが、勝ち上がりに最低限必要な0-0というスコアだけはしっかりとトリノに持ち帰った。最終的に重要なのはこの事実だけだ。
 
2)前半はモナコの独擅場
 
 モナコは、第1レグと同じくマルシアルを1トップ、モウチーニョをトップ下に置いた4−4−1−1(4-4-2)の布陣でこの試合に臨んだ。しかしチームとしての振る舞いは第1レグとは比較にならないほどアグレッシブなものだった。
 
 立ち上がりからチーム全体を高く押し上げ、前線からのプレッシングをフルスロットルで敢行する。最終ラインに対してMFが、中盤にボールが入るとDFが、次々と前に飛び出してプレッシャーをかけ囲い込むアグレッシブなハイプレスの前に、ユベントスは最終ラインからボールを持ち出すことすらままならず、自陣でのパスミスやボールロストを頻発することになった。
 
 ユベントスはこの日、第1レグと同じ4-3-1-2ではなく、あえて3バックの3-5-2を採用したのだが(理由は後述)、積極的に前に出てきたモナコのSBに押し込まれる形で両ウイングバックが最終ラインに吸収されて5バック気味になり、中盤の3人が数的不利に陥ってプレスの餌食になるという悪循環。
 
 結果的に、前半のボール支配率はモナコ58対ユベントス42。45分を通じてモナコがユベントスを自陣に押し込めるという予想外の展開になった。
 
3)モナコの限界
 
 前半を通してエンジン全開でハイプレスを敢行したモナコは、たしかにユベントスにサッカーをさせなかった。しかし最後の30メートルでほとんど何もできなかったこともまた事実だった。
 
 前線でプレスの先兵となったカラスコ、マルシアル、B・シウバというU-21世代のタレントたちは、ハードワークを続ける体力と素晴らしいテクニックを兼ね備え、ボールを持つと単独で状況を解決しようとする傾向が強い。
 
 しかしそれだけでは、百戦錬磨のユベントスDF陣を崩すのは難しい。事実、枠内に飛んだシュートは、コンドグビアが遠目からブッフォンの正面に放った力ないミドルシュート1本に過ぎなかった。
 
 勝ち上がるためには少なくとも1点が必要なレオナルド監督は、中盤の底で獅子奮迅のごとく動き回り、ユベントスの2トップにほとんど前を向かせなかったトゥラランを前半だけで下げ、後半開始からベテランのベルバトフを前線に投入して、さらに攻撃的な布陣を敷いた。
 
 だがこれによって、前線も中盤もプレスの圧力が下がり、ユベントスは少しずつスペースを手に入れてボールを持てるようになる。58分にはモラタがカウンターアタックで抜け出し、あわやという場面も作り出した(テベスへのラストパスをミスしてシュートまで行かず)。
 
 後半最初の15分、モナコはセットプレー、そしてバックパスを受けたボヌッチのトラップミスから二度ほど小さなチャンスを得たものの、攻勢もそこまで。60分を過ぎると疲労が目立ってプレスが効かなくなり、最後の30分は完全に手詰まりの状況に陥ってしまった。

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