【サッカーダイジェスト編集長の視点】「山雅スタイル」への期待を失わない3つの理由

2015年04月17日 谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)

堅守をベースに昇格を勝ち取ったチームが、リーグワースト失点では…。

前線で存在感を放つオビナ。高さと強さを兼ね備え、個人での打開力もキープ力もチームにとって大きな武器となっている。 写真:菅原達郎(サッカーダイジェスト写真部)

 試合後の記者会見場に現われた松本の反町康治監督は、苦虫を噛み潰したような表情を変えずに語り始めた。
 
「この2チームの間にどんな差があるのかと言えば、最後の精度の部分だと感じたところはありました。でもそれは、このリーグに昇格した段階で分かっていることなので、それを言い訳にするつもりはありません」
 
【J1展望】1stステージ・6節|全9カードの予想スタメン

 4月12日、快晴のアルウィンには史上最多となる1万8514人の観衆が詰めかけていた。試合開始の1時間前に、スタンドをびっしりと埋め尽くしたサポーターたちへ、J1リーグでのホーム初勝利を届けたい――。そんな選手たちの熱い想いは、キックオフ直後から見て取れた。
 
 ACLの中国遠征から中3日、それも同じスタメンを送り出してきた柏を相手に、松本は出足で上回る。「長いボールを蹴って、それを拾ってくるのが松本のスタイル」と、柏の大谷秀和が振り返ったとおりの展開で次々とチャンスメイク。開始15分で4回、相手ゴール前まで攻め込み、2度の決定機を迎えている。
 
 だが、最終スコアは1-3。21分に相手の鮮やかな連係から先制点を奪われると、長短のパスで揺さぶられ、守備に追われる時間が長くなったことでカウンターからの攻め手も失ってしまった。
 
 課題は明らかだ。5試合・9失点は、5節終了時点で甲府、新潟と並んでリーグワーストの数字。カテゴリーが異なるとはいえ、昨季J2でリーグ2位となる42試合・35失点と、堅守をベースに昇格を勝ち取ったチームがこれでは苦しい。
 
 試合後、3バックを務めるふたりが語った言葉が印象深い。
 
「広島戦も浦和戦もそうでしたが、最近はペナルティエリアのところまで引いて守備をすることに慣れてしまっていて、中盤であまりプレスがかからず、(相手に)ボールを簡単に前へ運ばれるシーンが目立っている」(飯田真輝)
 
「J1だと個の部分で外されるというか……。プレッシャーには行っているけど、(球際で相手に)左右にくるくると回られてかわされ、パスをつながれることが多い。やっぱり単純に取りに行くだけだと、J1のレベルだと奪えない。もっと誘う取り方というか、チーム全体で駆け引きをしていかないと」(酒井隆介)
 
 この日、スタメンとしてピッチに立った10人の日本人選手のうち、昨季までにJ1でふた桁以上の出場試合数を記録しているのは、両ウイングバックの田中隼磨と岩沼俊介の2選手のみ。松本が今、J1という高い壁に直面し、もがいているのは事実だ。

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