【名古屋】柿谷、齋藤ら大型補強がもたらしたモノ。15日間のキャンプで見えた収穫

2021年02月14日 今井雄一朗

新戦力は持ち味をアピール

今季、大型補強を行なった名古屋。柿谷ら魅力的なタレントが加わった。写真:今井雄一朗

 宣言通りの"欲張り"な15日間だった。1月30日から2月13日まで行なわれた名古屋のキャンプ。新型コロナウイルスの影響で、初日にフィッカデンティ監督が合流する異例のスタートとなったが、その環境こそが、逆により濃密な時間を生んだのかもしれない。

「今は時間があるので、全部の面で逆に欲張らないといけない」と語ったのはフィッカデンティ監督だが、指揮不在の数日で、走り込みを行ない、沖縄に乗り込んだ選手たちもまた貪欲だった。

 柿谷曜一朗、齋藤学、長澤和輝、木本恭生、森下龍矢ら実力者揃いの新加入選手は、自らの持ち味を誇示し、既存メンバーは昨季の積み上げをもって負けじとアピールを重ねる。序盤こそチームのベースを確認するような作業をしていたチームは、日に日に一体感を増していき、最終日には「『みんなの意識がだんだん高まった』というレベルの話をしているようでは去年よりも下ということになる。やって当たり前のことをどうやっていくかというところにもっと意識を向けていかなければ」とフィッカデンティ監督が求めるまでになっていた。

 もっとも、特別なことはしていない。キャンプ中の練習は非公開の部分を除くと、どれも昨季と同じようなものばかりだった。もっと言えば、フィジカルトレーニングの段階的な変化や、求められる肉体的な資質も同じだ。「選手はアスリートでなければならない」とする監督の基本的な考えは不変で、機動力や運動量を含めたインテンシティの高さが、今季も名古屋の土台を成す。

 それは柿谷や齋藤といったテクニシャンたちにも平等に求められ、「こんなに走ったことない」(齋藤)と言う声もちらほら聞こえてきたが、その誰もが前向きに、名古屋の選手であるために必要なものとして取り組んでいたのは印象的だ。
 
 異なるのは昨季のリーグ戦で3位に躍進したチームに、着実な上積みをするべく全員が意識を高めていたことである。キャンプ初戦の大宮との練習試合こそ3失点とらしくない姿を見せたが、攻撃陣の奮闘で4得点の逆転勝利にこぎつけ、以降の3試合では2失点しかしていない。

 強力なタレントを補強した前線は、4-2-3-1のサイドハーフ、トップ下、1トップの4ポジションの候補選手ら全員が得点を挙げ、4戦合計20得点と躍動した。とりわけ素晴らしかったのは琉球との練習試合で組んだ柿谷、阿部浩之、齋藤、マテウスのユニットで、プレッシングの強度も高く、相手を押し込むと、ショートカウンター、コンビネーション、シンプルな速攻と多彩な攻守の回転を見せて、45分で5得点を奪ってみせた。

 前線にはまだ前田直輝、ガブリエル・シャビエル、相馬勇紀、山﨑凌吾がおり、キャンプではいくつもの組み合わせが試されてきた。その質はどのユニットが良いというよりは、組み合わせによって特徴が変わるという傾向が強く、相手によって戦い方を変える名古屋のスタイルは、今季はより深みが増す可能性も大いに感じられるものになってきた。

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