「モウリーニョの考え方」が参考に? 元Jリーガー林陵平の“東大監督”初インタビュー(後編)

2021年02月07日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

「一定のゲームモデルおよびプレー原則の中で選手の特徴や判断を大事にする」

東大の新監督に就任した林陵平。(C)Kazuki Okamoto/ONELIFE

 サプライズ発表がされたのは、1月30日だった。ザスパクサツ群馬に所属した2020年シーズン限りで現役引退した元Jリーガーの林陵平が、東京大学運動会ア式蹴球部の新監督に就任したのだ。

 Jリーガーが引退後すぐに大学監督に就任するのは超異例。過去には同じく元Jリーガーの林健太郎や岩政大樹などが同大学のコーチを務めたが、OB以外で監督を務めるのは林陵平が史上初だという。
 
 東京大学ア式蹴球部は昨シーズンに東京都大学リーグ2部で2位に食い込み、新シーズンから1部リーグに昇格する。日本最高峰の頭脳を誇る集団が、元Jリーガーにして海外サッカーの知識も豊富な林新監督の下でどんな戦いを見せるのか、大きな注目が集まっている。本人に監督就任までの経緯、チーム作りの構想、そして目標などを聞いた。ここでは後編をお届けする。
 
※インタビュー前編はこちら!
 
――林さんは「海外サッカーマニア」としても有名ですが、ヨーロッパで参考にしたいと思っている監督はいますか?
 
「どちらかと言えば、グアルディオラ(マンチェスター・C監督)よりもモウリーニョ(トッテナム監督)ですかね。グアルディオラはもちろん歴史的な指導者ですが、彼の複雑かつハイレベルなスタイルはどこのチームでも実現できるものではない。大学サッカーだったらなおさら難しい。それよりもモウリーニョの『一定のゲームモデルおよびプレー原則の中で選手の特徴や判断を大事にする』って考え方のほうが好きですね。サッカーは監督がやるものではなく、選手がやるものですからねやっぱり」
 
――そのあたりの考え方は、元プロ選手ならではかもしれないですね。頭ごなしに理想論を押し付けるのではなく、一定のスタイルの中で選手の自主性や判断に重きを置く、というか。
 
「そうかもしれないですね。やっぱり僕もJリーグで色々と経験しましたし、選手の気持ちがよく分かりますから。それに、サッカーにおいて、ボールと人の配置がまったく同じ場面というのはほぼありえない。だから、もちろんゲームモデルやプレー原則は大事ですが、最終的には選手の判断が大事なんです。僕は選択肢をできる限り多く与えてあげて、あとは試合状況に応じて選手に判断してほしい。その判断に関しては、『こっちのほうが良かったかも』とは言うと思いますが、『俺の言う通りに動け』とは絶対に言わない。選手には積極的にプレーしてほしいですね」
 
――その部分は、「監督・林陵平」の神髄かもしれないですね。
 
「はい。この経験値と考え方は、監督をやるうえでも強みだと思っています。やっぱりプレーをするのは選手なので。もちろん、選手に丸投げにはしません。例えば『ラスト30メートルではこの3つのポイントを積極的に使おう』とか選択肢を与えてあげて、あとは展開に応じて選手が判断するとか、そういう指導の仕方をしていきたいですね。すでに海外サッカーで参考になりそうなプレーなどをピックアップして、動画編集などを進めています」
 
――例えば、どのあたりのチームを参考にされていますか?
 
「守備だと、マルセリーノ監督のアスレティック・ビルバオ、シメオネ監督のアトレティコ・マドリーがすごく組織化されていて、けっこう参考にしています。攻撃はどこのチームというのはないですが、海外サッカーを見る中で『この崩しは面白い』、『今の攻めは大学サッカーでも応用できそう』とか参考にできそうなものを集めている感じですね」
 

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