「日本人選手が挑戦しやすいクラブを欧州につくりたい」シント=トロイデン買収の真実――【STVVの野望】

2021年02月05日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

日本サッカー発展のために

17年11月の経営権取得記者会見後に撮られた一枚。合同会社DMM.com COOの村中悠介氏(左)と元CEOのフィリップ氏(右)。© STVV

 17年11月に『DMMグループ』が経営権を取得し、現在では6人の日本人選手と多くの日本人スタッフが在籍するベルギー1部のシント=トロイデン(STVV)。

 そんな注目クラブのスタッフに話を聞き、欧州サッカークラブの"リアル"に迫るのが『ワールドサッカーダイジェスト』誌で好評連載中の「STVVの野望」だ。第1回目は飯塚晃央CFO(最高財務責任者)が明かす「クラブ買収の真実」を紹介する。

 欧州クラブの買収といえば壮大なプロジェクトに感じるが、それはあるひとりの男のビジョンがきっかけだった。

 長年、日本サッカー界に携わってきた元FC東京GMの立石敬之(現シント=トロイデンCEO)は、日本がワールドカップで上位進出を果たすには人材不足のCF、CB、GK(いわゆるセンターライン)の強化が不可欠と考えていた。
 
 そのためには、レベルの高い欧州リーグで揉まれるのが一番だが、核となるポジションだけに若い日本人を積極的に登用する国外のクラブは多くなかった。

「それならば、日本人選手が挑戦しやすいクラブを欧州につくることはできないか」

 立石はそんな自身のアイデアを、立石の大学時代の後輩でサッカー関連の仕事をしていた山形伸之(現オリベイレンセCEO)とふたりのサッカー好きに明かした。ひとりは『合同会社DMM.com』の事業部長、緒方悠(現執行役員)。もうひとりは緒方の高校時代の同級生、倉田曜矢(現シント=トロイデン顧問)だった。3人はその考え方に深く共鳴した。

 その後、DMMで事業部長を務める緒方は、なんとか自分の会社で事業化できないものかと考え、上司である村中悠介(現COO=最高執行責任者)に相談した。そして、サッカー好きの村中の賛同を得て、亀山敬司会長へのプレゼンに持ち込むことに成功した。

 綿密な資料を作成してプレゼンに臨み、最終的には立石もアドバイザーとして同席し、会長からのゴーサインを引き出したのである。動画配信やオンラインゲーム、FXなどの主力事業で得た資金を活かして、様々なビジネスに投資するDMMの企業風土があったからこそ、実現に漕ぎつけられたと言っていいだろう。

次ページ買収成功の裏側にはある日本人選手の存在が…

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