「懐かしい感覚」「楽しいサッカー」新生・浦和レッズの躍進を予感させる“ミシャ体制”とのいくつかの類似点

2021年01月30日 佐藤亮太

思い起こされるミシャが就任した2012年シーズン

今季から指揮を執るロドリゲス監督。選手と頻繁にコミュニケーションをとる様子も見られた。写真:田中研治

 浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督が就任して初の対外試合となった沖縄SVとのトレーニングマッチは、浦和が2-0で勝利した。

 始動して10日余り。公開練習やオンライン会見ではロドリゲス監督が目指すサッカーの骨格となる「位置取り」「攻守の切り替え」や「結果にこだわる」「最後まで諦めない」といった選手に求める姿勢が伝わる。

 チーム作りの途上にあるが、現場の様子や選手のコメントをピースに全体像を組み立てると、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(以下・ミシャ)の手法が思い出される。

 DF宇賀神友弥は「すべての練習において、身体も使って、頭も使うミシャの時に近いような練習が多く、懐かしいなという感覚と楽しいなという感覚を覚えながら練習している」
「3人目、4人目の動きを要求される。ボールを持っていない選手の動き次第で選択肢は増える。そこを選ぶのは自分たちだよというところは似ている」と類似点を挙げた。

 そこで思い出されるのは、ミシャが就任した2012年のシーズンだ。

 残留争いと散々だった2011年を踏まえ、クラブは安定した成績と魅力あるサッカーを目指すべく、ミシャを招聘した。

 ただ危惧されたのは戦術があまりにも独特で難解。さらにミシャサッカーを知るのは柏木陽介と加入したばかりの槙野智章のみ。適応する選手の獲得もままならず、スタイル浸透には時間がかかるとされた。

 この年、2月の鹿児島県指宿での二次合宿。連日のゲーム主体のハードメニューに大半の選手は付いていくので精一杯。当然、疲労はピークに達し、緩慢なプレーが見え始める。それを見透かしたかのように、ミシャは「もうゲームをしなくていい!!」と激怒。練習を切り上げたこともあった。また、のちに聞いた話だが、「まともにパスも出せないのか」とこぼしたほどチームは未熟だった。

「(ミシャが就任した)12年の時は今までパスサッカーに触れていない選手が多く、ここで縦パスを入れていいの? この遊びのパスは必要なの? と探り探りだった(宇賀神)」と苦労ぶりが分かる。

 だがチームは成長する。4か月後の6月、広島で長年取材するテレビクルーが練習場にやってきた。練習を見たスタッフが「今日の内容はサンフレッチェ2年目にやっていたメニュー。さすが浦和の選手、吸収が早い」と驚いていた。

 時間がかかるサッカースタイルと言われながらも、終わってみればリーグ3位。ACL出場権を得た。

 躍進への要素は揃っていた。残留争いをした前年の悔しさとミシャサッカーへの前向きな挑戦。そして坪井慶介、平川忠亮、山田暢久ら長年、支えた30代の選手の踏ん張りも、無視できない要因のひとつとなった。
 

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