加速する若手の海外移籍――求められる語学力、適応力、メンタリティ。川島永嗣が指摘するのは「通訳が入ると…」

2021年01月24日 元川悦子

海外移籍は27歳と遅かった川島だが、語学の習得は…

ストラスブールの川島は一時は奪われた先発の座を奪い返し、定着するに至っている。ポジション柄、そのベースにはチームメイトとの密なコミュニケーションは不可欠だ。(C) Getty Images

 レアル・マドリーから今月、ヘタフェに3度目のレンタル移籍に赴いた久保建英の活躍ぶりが話題になっている。

 久保はご存じの通り、小学生の頃からバルセロナのカンテラに所属し、現地の学校に通って教育を受けた選手。幼い頃からスペインの生活環境に慣れていたため、18歳でFC東京からレアルに赴いた時も、一般的な「日本人若手選手の海外挑戦」とは捉えられなかった。

 彼と同い年で、バルセロナから熱視線を送られた西川潤(C大阪)が「僕はスペイン語を話せないし、現地に馴染むのは簡単じゃない。いきなりスペインに行って試合に出られるタケとはベースが違うと思います」と話したことがあったが、全員が久保になれるわけではない。普通の日本人選手が異国に渡って成功を掴むには、まずは言語を中心とした「適応力」と「コミュニケーション力」が不可欠なテーマになってくる。

 Jリーグにやってくる外国人選手の場合、通訳が身の回りの世話をするのは普通だが、日本人選手が欧州に赴く場合、通訳がつくケースはかなり少ない。1月にベルギー2部・ロンメルへ移籍した斉藤光毅は日本人通訳に生活面を含めたサポートをしてもらっているようだが、そういう環境は長くても半年くらい。その後は言葉、文化、習慣の違いにひとりで向き合わなければいけない。そのハードルをどう超えていくかが肝心なのだ。

 言語の課題を完璧にクリアしたトップ選手の代表格と言えるのが、川島永嗣(ストラスブール)だろう。

 彼の場合、海外移籍は27歳と遅かったが、大宮アルディージャでプロキャリアを踏み出した当時のイタリア留学をきっかけに、語学学習を地道に行なっていた。最初は英語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語のテキストを一気に購入。毎朝30分間勉強してからトレーニングに通う習慣を身に着けた。そのうえで、ブラジル人選手とポルトガル語で話したり、毎年のように行ったイタリア留学先でイタリア語を操ったり、2004年に赴いた名古屋グランパス時代は英会話学校に通いながら、フェルホーセン監督やヨンセンなどと意思疎通を図った。

 こうした努力の結果、リールセに移籍した時点では英語とイタリア語の日常会話は問題なくできたという。「語学の達人」はスタンダール・リエージュ時代にもフランス語も3年がかりで独学で習得。それもJリーグ在籍時に磨いた語学センスの賜物と言っていい。

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