先発は4年で11試合、懲罰でユースに降格…神戸の新戦力・リンコンの“リアル評”。日本行きの決め手となったJリーガーの存在とは?【現地発】

2021年01月21日 リカルド・セティオン

あまりに早くトップチームに入ってしまったことから伸び悩み…

神戸への完全移籍が発表されたリンコン (C) Getty Images

 紆余曲折の末、ヴィッセル神戸に入団が決まったリンコン。日本では10年に一度の金の卵のような騒がれ方をしているようだが、ちょっと待ってくれと言いたい。それはいつの話だ、と――。

 たしかに、リンコンは有望な選手だった。16歳でトップチームに入ったのはそれに値する実力があったからだ。ブラジルU-17代表でも活躍し、フラメンゴも将来を期待して2023年までの長期契約をし、違約金5000万ドル(約50億円)を設定した。

 しかし、彼の場合は「すごい」という評判があまりにも先行しすぎた。トップチームに加入した頃をピークにそのパフォーマンスは低下してくる。それはスタッツからも明らかだ。

 彼がスタメンとしてプレーしたのは、この4年間で11試合のみ。2018年に2試合、2019年に5試合、2020年に4試合のみだ。途中出場が52試合で、そのうちの33回は後半の30分以降にのみプレーしている。つまり、彼はほとんどの試合で15分以下しかプレーしていない。一昨年のFIFAクラブワールドカップのリバプール戦でも、途中出場しているが、ごく簡単なシュートをミスして、戦犯にあげられている。

 この伸び悩みは、彼があまりにも早くトップチームに入ってしまったからとも言われている。基礎をきちんと固められなかったことで、一軍のプレーについていけず、フィジカル、テクニックの面だけでなく、メンタル面でも準備はできていなかったという指摘もある。

【動画】神戸加入が決まったリンコンのゴールシーンはこちら
 リンコンには今回3つのチームからのオファーがあった。ヴィッセル神戸、MLS(アメリカ)のシンシナティ、そしてキプロスのパフォスというチームだ。真の逸材であれば、ヨーロッパのビッグクラブが獲得に動くはずだし、そうでなくともブラジルの強豪がオファーしてくるはずだ。

 実際、彼とフラメンゴのU-17チームで一緒だったヴィニシウス・ジュニオールはレアル・マドリーの選手となっている。当時はリンコンの方が多くのゴールを決めていたのだが……。

 そのリンコンの代理人は3人いるのだが、とにかく彼らはことあるごとにチームのやり方に口を出す。なぜリンコンをもっと使わない、と。特に今シーズンの開幕前にいくつかのオファーがあったにもかかわらずフラメンゴが首を縦に振らなかったことで、代理人とチームの関係は険悪になった。代理人があまりにもうるさいので、チームはほとほと嫌気がさし、リンコンを本気で売りたいと思うようになったのだ。

 今年の8月にはヨーロッパのチーム3つからオファーが来て、10月にはウクライナの名門ディナモ・キエフからレンタルの申し出であったが、フラメンゴはこれを断った。フラメンゴは完全移籍での売却を希望していたからだ。

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