【連載】識者同士のプレミア放談「武藤にビックリ、リバプールはがっかり」

2015年04月10日 田邊雅之

午後のワイドショーでチェルシーの名前が出た時は――。

ユナイテッドとアーセナルに連敗したリバプールは、これで事実上の終戦か。4位=CL出場権が遠のく……。 (C) Getty Images

 各国のサッカー事情に通じたエキスパート2人を迎え、クロストークで掘り下げる連載企画。
 
 田邊雅之氏と山中忍氏(両氏のプロフィールは末尾に)によるプレミアリーグの大放談は、飛び込んできたビッグニュース、武藤とチェルシーの話から"熱戦"の火ぶたが切って落とされた。
 
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田邊雅之:お疲れさまです。いきなりFC東京の武藤の話が飛び込んできましたね。移籍先はなんとチェルシー。
 
山中忍:ええ、かなりビックリしました。しかも報道は、完全に日本が先行していた。もともと香川が移籍したケースでも、日本で噂が流れるタイミングの方が早かったわけですけど。
 
田邊:武藤本人は、まだ身の振り方について考えていると。でも僕たちのように、プレミアなんて見向きもされなかった頃から取材をしてきた人間にとっては、悪い話じゃない。午後のワイドショーで、チェルシーの名前が出た時にはのけぞりました(笑)。
 
山中:ワーキングパーミットから、ローンに出ている選手との競争まで含めて、いろいろクリアしなければならないハードルはありますけど、今後の展開は興味深いですね。まあじっくり推移を見守っていければと。
 
武藤へのオファーは本気? 山中氏が「チェルシーの思惑」に迫る

 その昔、稲本の時に宮本とごっちゃにされたり、今年の冬、岡崎のレスター入りの噂が長友の写真付きで報じられたような凡ミスはないので、こちらのメディアでの滑り出しは良好ですね。
 
田邊:一方、プレミアでは上位争いの明暗が分かれました。CL枠を狙っていた3チーム、リバプールとスパーズ、セインツが全部躓いている。
 
山中:リバプールは特に象徴的だった。ユナイテッド(30節/1-2)とアーセナル(31節/1-4)で2連敗でしたから。希望の光が最後に一気に消えたみたい。
 
田邊:新聞でもテレビでも、ロジャース監督の敗北宣言みたいな見出しばっかり。
 
山中:アーセナルとは1-4ですから。しかも10分足らずの間に3点立て続けに入れられている。ロジャースのリバプールは守備に不安を抱えていたけど、一番ネックになっていたところが、シーズンの一番大事な場面で露呈してしまった感じは否めない。
 
田邊:もともと彼はスペイン流の攻撃的なパスサッカーが大好きで、デル・ボスケ(元スペイン代表監督)に教えを請いに行ったこともある。
 
 でも番記者の間では、守備の練習に割く時間が少なすぎると言われていたのも事実。ただでさえバックラインが安定しないのに、ペップ時代のバルサのような5秒ルールや4秒ルールで、前からプレスに行くわけでもない。
 
山中:たしかに。いかにシュクルテルが怪我をしたといっても、ビッグマッチでコロ・トゥーレをCBで先発させなきゃならないというのは、相当きついですよ。
 
田邊:試合前に敵の選手と握手をしている時点から、すでに不安そうな表情をしている。
 
山中:むろんロジャースがやろうとしているサッカー自体は、リバプールのファンやサッカー関係者にも評価されているし、将来のイングランド代表監督候補にも名前が挙がっている。でもリバプールがもう一度タイトルを狙えるようになるためには、監督としてもう一皮剥けなければならないかなと。ロジャースは北アイルランド人だから、イングランド代表監督なんて絶対に嫌だと思いますけど(笑)。
 
田邊:ゲームマネジメントや守備の固め方に関しては、方法論を磨かなきゃならないところが多分にある。北アイルランドの監督になったりしたら、それこそ守備を固めるところから入らないと地獄を見る(笑)。
 
 
 
 

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