「何でもできる悪ガキ」ルーニーはなぜ愛されたのか? 英国人記者が語る“黄金世代最強FW”の功績【現地発】

2021年01月19日 スティーブ・マッケンジー

南国の島で出会った青年が…

マンチェスター・ユナイテッドやイングランド代表で華々しい活躍をしたルーニー。彼が愛された理由を英国人記者がひも解いた。 (C) Getty Images

 2002年の夏だ。私はカリブ海にあるセントルシアという島でのバカンス中に、リバプール生まれだという若い男女と出会った。

 同じイングランドからやってきたこともあり、私たちは自然と意気投合した。そして互いにサッカーファンだと知ると、「実はエバートン・ファンなんだ」と語った彼は、愛するクラブの下部組織がいかに優れていているかを熱弁を振るった。この時、全く入り込む余地を与えられなかった私は圧倒されるばかりだった。

 その出会いを忘れかけていた2か月後のある日のことだった。私はテレビを見て、愕然としていた。エバートンの本拠地グディソン・パークで行なわれたアーセナル戦のピッチに、あの青年が立っていたのだ。

 すでに腰を抜かしかけていた私はさらに度肝を抜かれる。「ウェイン・ルーニー」という名の16歳の若者は、エリア外から名手デイビッド・シーマンの牙城を崩す強烈なミドルシュートを突き刺したのである。この時は驚きのあまり言葉が出なかった。

 そのルーニーが、現地時間1月15日に19年に及んだ現役生活からの引退を発表した。35歳となり、ダービー・カウンティで正式な監督になるのを機にスパイクを脱いだのである。

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 彼は、最も長いキャリアを過ごしたマンチェスター・ユナイテッドやエバートンのファンだけでなく、イングランド中のサッカーマニアから愛される存在だった。

 あのクリスチアーノ・ロナウドが「ウェインはピットブル(闘犬)だ」と評したように、若手時代のルーニーは気性が荒く、ピッチ内外で頻繁にトラブルを起こす"問題児"だったが、そんな彼を誰もがまるで我が子のように見つめていた。

 彼がどれだけ酒やギャンブルに溺れ、女性問題などのスキャンダルで揺れても、サッカーファンの多くは、ピッチ上で闘争心をむき出しにし、逞しく戦うルーニーを「誰でも間違いは起こすもの。彼ならばやってくれる」と見捨てはしなかった。

 もちろん彼の持っていたポテンシャルの高さが、人気の秘訣の一つでもある。

 イングランド代表(53ゴール)とマンチェスター・ユナイテッド(250ゴール)の最多得点記録を塗り替えた。さらに大会最年少得点記録(18歳)を更新したEURO2004や2011年に行なわれたマンチェスター・ダービーで決めたバイシクルボレーのように記憶に残るシーンも演出し、"持ってる男"としても観衆を熱狂させた。

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