佐藤寿人が千葉に残したもの――。ラストゲームで見せた一体感で「J1の舞台に…」

2020年12月22日 加茂郁実

千葉への貢献度に関しては、悔しいし、申し訳ない

今季は10試合に出場し2得点を記録していた佐藤。ラストゲームは今季2度目の逆転勝利となった。写真:滝川敏之

 12月20日、ジェフユナイテッド千葉のFW佐藤寿人が21年の現役生活にピリオドを打った。

 日本代表にも名を連ね、J1リーグ通算161ゴールは歴代2位(Jリーグ通算220得点は歴代1位)の記録。アカデミー時代からプレーしてきた千葉(当時市原)をはじめ、セレッソ大阪、ベガルタ仙台、サンフレッチェ広島、名古屋グランパスでプレー。エースストライカーとして君臨してきたこれまでの功績は輝かしいものだ。

 2019シーズンに18年ぶりに千葉に復帰。アカデミー時代の6年間を含め、自分を育ててくれたクラブに最後の恩返しとして、J1に昇格させたいという思いで戻り、2年間プレーした。

「特別な才能もない、身体能力に恵まれたわけでもない、普通のボクがここまで長く、第一線で戦ってこられたのは、アカデミー時代に千葉(当時市原)がボクを育ててくれたから。最後に千葉のために何かをしたい」

 しかし、力は思うように発揮できなかった。「トップチーム昇格後の2年間、そして、戻ってきてからの2年間で、活躍できなかったことは悔しく、申し訳ない」と、引退発表時のコメントで気持ちを吐露している。それでも、寿人が千葉に残したものは大きい。
 
 妥協は決して許さない。自主トレーニングのシュート練習でも、常に実戦を考え、簡単なシュートでは終わらせない。あえて難しい態勢やボールを意識することもあるし、「もっとこうしてほしい、もっとこうやったほういがいい」という要求も絶えなかった。

「ボクは、周囲の選手に知ってもらってなんぼだし、そうやって要求しあっていかないと、チームとしてはよくなっていかない」

 また、アカデミーの選手には時には優しく、ときには厳しく接した。2019年のある日、トップチームの練習に参加したアカデミーの選手たちはいきなり洗礼を受けた。「自己紹介、ちゃんとして」と全体練習開始前に寿人が発したのだ。その意図を聞くと、「トップチームの練習に参加するということは、お客さんの状態じゃダメ。同じ立ち位置だと意識しないと。その最初のステップとして自分を知ってもらわないといけないし、そのための自己紹介は最低限必要なこと」と。この言葉でいつもどこか遠慮がちだったアカデミーや若手選手たちの目の色が変わった。

 一方で、優しさも忘れない。少しプレーに悩んでいるなと感じる選手がいれば、積極的に声をかけ、アカデミーの選手にもアドバイスを送った。そういった雰囲気からか、アカデミーの選手から積極的にトップの選手に質問する場面を見かけることが多くなっていった。
 

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