「やっぱりジェフが、千葉が好きだから」現役最後の試合は号泣とともに…増嶋竜也が引退を決意するまで

2020年12月21日 加茂郁実

何度も揺れ動いた現役続行と引退

17年の現役生活にピリオドを打った増嶋。J1・265試合、J2・72試合出場という輝かしい結果を残した。写真:滝川敏之

 DF増嶋竜也が17年間のプロサッカー人生に幕を閉じた。

 市立船橋高時代には全国高校サッカー選手権などで活躍。卒業後FC東京に加入し、ヴァンフォーレ甲府、京都サンガF.C.、柏レイソル、ベガルタ仙台などで活躍した。各年代別の代表にも選出され、J1・265試合、J2・72試合出場という輝かしい結果を残したが、その最後の試合はタイムアップの笛とともに、いや、その前から涙であふれていた。

 12月10日、クラブから今季限りでの契約満了が発表された。「現役続行」の気持ちが強かったが、気持ちは揺れていた。「まだまだサッカーを続けたいし、今やめたら後悔する」という一方で、「地元、千葉で引退をするのが夢」であると。

 2年ほど前に増嶋は自身の引退についてこう語っていた。

「自分のプレーができなくなったらキッパリとやめると思う」

 だからこそ現役続行の思いは、パフォーマンスに自信を持っていた証拠だった。実際、最終戦のギラヴァンツ北九州戦では不慣れな右サイドバックながら、攻守にアグレッシブなプレーを見せ、2-1の勝利に貢献した。
 
 実は、昨年末で引退しようと思ったこともあると、シーズン当初に漏らしたこともある。

「(佐藤)勇人さんがこれまでのチームの結果に責任を感じて引退した。勇人さんには及ばないけれど、自分も2年間、ジェフを昇格させるために頑張ってきた。けれど、結果はプレーオフ進出もかなわなかった。自分なりの責任の取り方を考え、やめるという選択肢もあった」

 ただジェフが好きだったし、ジェフのサポーターを愛していた。挨拶もしないでやめられない。そして、必要とされるなら、たとえ試合に出場できなくてもそれ以外のところでチームのためになることをやっていき、最後を愛するみんなとともに過ごしたかった。

 一方でシーズンがスタートすると、思った以上に増嶋のパフォーマンスが高いことは、見ている誰もが感じていた。また、ユン・ジョンファン監督が求めるサッカーにもフィットしていた。本人も、「まだまだやれる」という気持ちが強くなった。だからこそ、現役続行と引退のはざまで気持ちは揺れ動いた。

 思いは日々揺れたが、「地元である千葉で皆さんに見守られて引退できなかったことを後悔するのでは」という思いが強くなっていき、最終戦を前に引退を決意したのだ。
 

次ページ「若手選手の成長が日々うれしかった」増嶋がジェフに残したもの

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事